4-6.襲撃
4-6.襲撃
「それで一つ、ご提案があるのですが。」
ニコラ、ザシャとの3人だけになり、デリヴァは声を潜めて話した。三人が角突き合わせた。
「ニコラ様とザシャさんでお互いベッドを入れ替わって頂けたらと思うのです。」
「えっ?」
ニコラが声を上げた。
「それでは、ニコラ様に私の粗末な床を使ってもらうことになるが。」
「殺されるよりマシでしょう?」
「ニコラ様は安眠していて大丈夫ですし、来ると分かっていれば対応できますよね?ザシャさん?」
「無論だ。」
「眠りのお香を焚いてくる可能性もありますので、解毒の飴をお渡ししておきますね。」
「こんなものまで?」
「一応治癒師ですから。」
デリヴァはウィンクした。
「それと、お二人ともこの銀貨を差し上げますから、敵が捕まるまで、枕の下に忍ばせてお休み下さい。」
「まあ、きれい。珍しい銀貨ね。」
「古代王国のレオ銀貨です。軽い魔力を帯びていますのでピンチになれば私も駆けつけます。」
「デリヴァ殿が駆けつけてくれれば頼もしい。」
「あ、何度も申しますが、私は喧嘩はからっきしですよ。せいぜい、足止めしたり転ばせたり。細腕なので、荒事は苦手なのです。」
「うーん。制圧という意味では最強な気もするが。こないだのアサシンと言い。」
「いえいえ。副作用のある魔法でみなさんに打撲傷を負わせてしまっていますしね。」
「では、私はルイザさんと私の寝室で休んでいます。結界を超えると、レオ銀貨がブルブル震えますから。ザシャさんは、鎖帷子を着て寝たふりを続けて下さい。お布団の下にレイピアなど忍ばせて置いても良いと思います。」
「わかった。貴殿が味方で良かったよ。もし私がアサシンだったら、生きて帰れる気がしない。」
ザシャは素直に頭を下げた。
「うふふふ。では、お休みなさいませ。」
デリヴァは頭を下げると、自室に下がった。
歯磨きをして、ルイザと他愛ないおしゃべりなどをし、それぞれ布団にもぐり込んだ。
デリヴァはこういう時でも比較的すんなり寝付くのであるが、今日はルイザが寝静まるのを伺っていた。
「一応ルイザもとばっちりが来ないように。『シールド』」
すやすやとルイザが寝ながら微笑んだのを見ると、デリヴァも自分の肩に布団を掛けて寝息を立て始めた。
真夜中…。
治癒師の敏感な鼻が匂いを捉える。眠りの香が焚かれている。お香の匂いでルイザはぐっすりと眠っている。
――やはり早速来たか。
音もせず、廊下を移動する気配がした。多くはない。
――一人か?
庭や戸口の結界が反応していない。
――侵入の形跡がない?ということは、賊は内部の人間か?
デリヴァはむくりと起き出した。ルイザに
(行ってきますね)
と囁くと、そっと扉を少しだけ開けた。その時、細い影が音もなくニコラの部屋の扉を開けたかと思うとするりと中に滑り込んだ。デリヴァは、扉が完全に閉まらないように、スライムのようなものを挟み込み、忍び足でニコラの部屋に向かった。
賊は真っ直ぐニコラ様のベッドに向かった。もちろん中身はザシャである。
その心の臓をめがけて、短刀を振り下ろそうとした瞬間、ニコラ様の布団に潜んでいたザシャがレイピアで賊の左肩を貫いた。
「ギャッ…。」
賊は床に転がった。女である。
「ツルリ下敷き」
デリヴァはぼそりと言った。賊は滑る下敷きの上に乗ったかのように起き上がろうとしては転んだ。
その隙に、デリヴァは、ザシャのベッドの影まで走り、小さな声で「シールド」と唱えた。ザシャは目にも止まらぬ速さで賊にまたがり、短剣を取り上げてしまった。
「ルクス!」
デリヴァは光魔法を唱え、部屋を明るくする。
「警報を頼む。」
ザシャが指示した。
「了解。」
デリヴァは部屋の隅の紐を引いた。全館警報がけたたましく鳴った。
「お縄になれ!」
ザシャが言う。デリヴァが縄を投げ寄越した。
賊の手を後ろに縛り、漸く無力化した頃、警報を聞いて、モーンゼーンやカーネギー、警備を仰せつかった使用人達が次々とニコラの部屋に集まってきた。さすがに全館警報が鳴ると、解毒の飴をなめていたニコラも目を覚ました。ロミルダ婦人ら女性に守られているが、お香が効いているのか、女性陣も眠そうにしている。
そして、伯爵が賊の覆面に手を掛けた。
「改めさせてもらうぞ。」
賊の顔が顕わになった。




