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結婚したのに6年間無視され続けた私、本当の理由 〜原作にいない貴族令嬢は世界を変える〜  作者: 唯崎りいち
第四章 誰も知らない物語

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離れるという選択

 僕、アイゼルが大聖堂の泊まっている部屋に戻ると、クレアがいた。


 ミアとギリアムもいる。


 でも、雰囲気が変だ。


 クレアが僕を見てあからさまに『まずい』と言う表情になる。

 ギリアムも特に僕に何があったのか話す気がなさそうだ。


 よっぽどまずい事があったんだな。


 僕はクレアの側にいく。


「クレアちゃん、今日はギリアムを困らせる何をしたんだ?」


「何もしてないわよ。大聖堂の周りを散歩してただけ」


「……大聖堂の周り?」


 すでに不穏だ。

 大聖堂の周りは特に何もないはずで、裏側は特に湖との間が崖のようになってる。


「なんでそんなところに行ったの?」


「珍しい植物が崖の下の洞窟にあるって言うから見に行ったの……」


 そう言えばそんな場所があったな。

 最初に大聖堂に侵入する時にある程度の地理は覚えた。

 その洞窟から大聖堂内につながっている道があればいいと思ったけど、なさそうだった。


 観光客も行く場所だから、ギリアムと行ったのなら、なんの危険もなかったと思うけど。


 この辺な雰囲気はなんだろう?


「アイゼル、私、一人で観光したいの」


 クレアちゃんが言う。


「もう、今日でこの聖都ヴァティウスにいるのは最後でしょう? 聖都の大聖堂の近くなら安全だから、一人で歩いても大丈夫! ギリアムに護衛入らないって言って、アイゼル」


 それであんな雰囲気になってたのか。


「絶対に一人で動き回るのなんてダメだよ。大司教が協力的になったからって、教会が安全になったわけじゃないって、クレアちゃんが昨日言ってた」


「う」


 本当に一人で安全だと思ってるなら、僕としてもいいのに。

 クレアは何か隠してる。


「どうして、一人になりたいの?」


「アイゼルは一人で動き回ってるのに!」


「僕は、自分の身は自分で守れるから」


「もう、まだお昼過ぎたばかりなのに、なんでアイゼルが、戻ってくるの?」


 もうクレアちゃんは、完全に僕が邪魔だって隠そうともしてない。


 これも“絶対に言えない秘密”のことなのか?


「クレアちゃん、僕は明日から、別に場所に行くことにしたよ」


「え? 別の場所ってどこ?」


「教皇から聞いた、ルシアンが昔住んでいた場所に行こうと思うんだ」


「え? 教皇? ルシアン!? なんなの、急に!?」


 クレアちゃんが混乱している。


 さっきまでの君が言っていたことも僕にはこれくらい意外なことに聞こえてたんだけど。


「どう言うことですか! アイゼル様!?」


 後ろにいたギリアムも驚いてる。


 僕は教皇から聞いた話をした。


「教皇の出身地がルシアンの生まれた村だったの!?」

 クレアが言うと、


「そんな場所にクレア様をお連れできませんよ!」

 ギリアムも言う。


 もう一人、この部屋にはミアもいたが、ミアは黙っている。


「クレアちゃんを連れて行くつもりはないよ。毒ガスが噴き出しているところなんて」


「アイゼルが一人で行くつもりなの?」


 クレアちゃんが僕を見て言う。

 驚きより、戸惑っているようだった。


「アイゼル様はずっとクレア様のお側を離れないと思っていました」


 ギリアムも怒ったように言う。


 6年間ずっとクレアを辺境の城砦に閉じ込めていたのは僕だ。

 安全だと思える場所があればクレアから離れていられる。


 外に連れ出したからには安全じゃなくなるのは分かっている。


 ただ、このままずっと一緒にいてもクレアの安全を本当に守れているとは言えない。


 “絶対に言えない秘密”がある限り、クレアが危険な事をするのを察知したり止めたりする事は出来ないんじゃないか!?


 クレア自身は気づいていないけど、僕が長年追っていた村や町から色を奪っていくあの白い影の現象を、クレアが触れることで一瞬で元に戻してしまった。


 あんな事が出来る子を僕のモノにしておいていいのか?


 もっと、みんなの役に立つ人なんじゃないのか……。


 クレアを守るのは世界を守るのと同じなのかもしれない……。


 考えても分からないことだらけで、それはクレアの“絶対に言えない秘密”から来ている。


 ルシアンの秘密とクレアの秘密は何かつながってる——。


 勘だけど、初めてルシアンを見た時のクレアの様子や、僕が忘れていた僕の過去にいたルシアンの存在を思い出させてくれたのがクレアだったこと。

 きっとつながってる——。


 それで、このままルシアンの故郷に連れて行くのは、クレアにとって危険すぎる。

 だったら離れる選択をするだけだ。


 ただ、僕が離れたらここのクレアの危険度が増すのは確かだった。


 でもここから、真っ直ぐに高山地帯の別荘に行く間なら、ギルアムだけでも問題ないはずだ。


 ここでクレアと離れなければ、後になるほど危険になるかも知れない。


 クレア自身が、自分で秘密の行動を取ろうとしている。

 このまま続くと守れなくなる。


「クレアと離れたくないが、今、離れなければ、確実に勝てない危険が待っている。ギリアムになら任せられる」


 ギリアムはハッとした。


「クレア、僕がいない間、絶対にギリアムと離れないって約束して欲しい。今日みたいに一人になろうとしなうで」


 クレアは、すぐにうなづいたけど、どこか不安そうだった。


 ギリアムも、うなづいた。


「必ず、クレア様の事はこの命に変えてもお守りします」


 これで、明日からクレアとは離れ離れだ——。


 クレアの僕を見つめる瞳が揺れている。


◆◇◆


 アイゼルが私と離れて別行動するならちょうど良かった。


 エドを探す必要もなくなった。


 でも、別の不安が生まれる。


 アイゼルなら心配ないと思うけど、私から離れて危険な事をしないといいけど……。


 教皇から聞いたルシアンの故郷なんて、怪しい気がする。


 ルシアンの故郷って言葉が、どこか私の記憶の引っかかる。


 何か原作での重要な秘密の隠れていた場所だったとか?


 原作のヒロインのマーシャルとヒーローのアイゼル何訪れたシーンはなかったと思うけど……。

 何かはあったんだ——。


 アイゼルが、今そこに向かう事は原作とはズレてる。


 けど、誰かが行く必要はある場所なのかも。


 アイゼルが行く事で、誰かが行かなくなった場合の補完になるのかも。


 教皇がルシアンと同じ村出身というのも出来すぎているけど、覚えてないだけで原作にあった設定だったの?

 それとも作者の頭の中にあっただけの事?


 アイゼルが行く事を止める理由が思いつかない。


 原作ではずっと生きてるアイゼルが危険に巻き込まれて……。


 そんなことも起こるのかも知れない。


 アイゼルと離れる逃しとても怖い。


 ……アイゼルがしたがっていた事、今してもいいのかな……。


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