似ている!? 3
今日の授業も淡々とすぎていった。
というか、中学よりもレベルの上がった高校の授業のはずなのに、なのに・・・・・・
なに、この簡単な授業は!
優しすぎる! 簡単すぎる! ばかばかしすぎる!
各教科の基礎を教わっているだけで、様々な理論を駆使した、高度で知的な授業の内容になっていない!
この程度のことなら、半日を学校の椅子と机に縛り付けられて、授業に延々とつき合わせられなくても、家で一時間ほど参考書でも眺めている方が、はるかに勉強になる!
高校って、こんなレベルの低い授業で大丈夫なの?
こんなので、3年後、どこかの大学に進学できるのかしら・・・・・・
でも、授業中よく見ると、この程度の授業でさえ、ついてこれていない生徒たちもいるみたいで・・・・・・
先生が黒板に書いた、教科書に解き方が載っているような基礎問題ですら、解けずに、ウンウンうなってる生徒たちがいる。
う~ん・・・・・・
これって、もしかして、私、急に頭がよくなったとか?
知らないうちに、高校の授業すら簡単に思えてしまうほど、脳の中が進化したのかしら?
なんて、思いつつ、教室の中を見回してみると、私と同じように、勉強が簡単すぎてつまらなさそうな生徒たちもいるんだよねぇ。
たとえば、委員長とか、ありさちゃんとか・・・・・・
いわゆる、さくらヶ丘組。
ってことは・・・・・・
だめだ、この学校の授業レベルは、偏差値40台の神宮寺ベース。神宮寺高校に合格した生徒たちに合わせた授業しかしていない。こんなのじゃ、勉強にならないよ!
なんとかしなきゃ!
この学校の勉強だけじゃ、大学合格なんて、夢のまた夢!
私が、これからも輝かしい人生を送るためには、自分自身でなんとかしなくちゃ!
って、よく見たら、委員長、教科書を見ているフリして、参考書出して、一人で勝手に勉強しているし・・・・・・
ずるーい!
でも、そうか、そういう方法があったんだね。
よし、私も、明日から!
私たちの担任は、体育の教師。
今日みたいに6時間目が体育の授業だと、ラクなんだよねぇ。
数学教師のB組みたいに、一々、着替えて、教室に集まりなおさなくても、体育の授業の延長で、帰りのホームルームできちゃうし。
今日も、グラウンドで、A組の男子と女子、朝礼台の横に集まって、担任からの連絡事項を聞いた。
いわく、買い食いせずに、まっすぐ帰れだの!
いわく、カップルは校内でいつまでもいちゃいちゃしておらず、とっとと別れて家に帰れだの!
いわく、色気ムンムンの音楽の先生とこれから仕事帰りにデートだから、面倒を起こさず、さっさと帰れだの!
そして、解散、男子も女子も、てんでバラバラに散っていった。
このままジャージ姿で、部活動へ向かうもの、一旦着替えに更衣室へもどるもの。
中には、この格好のままで帰宅しようという剛の者もいたりして・・・・・・
私は、もちろん、着替えに更衣室組。
だって、こんなダサダサ、ジャージ姿じゃ、美の女神つかさ様の名折れになっちゃうよ!
もちろん、一部のマニアには、こういう体操服姿、ジャージ姿って、受けがいいみたいだけど・・・・・・
そんな一部の人のために、みっともない格好をガマンしなきゃいけない義理はない!
私、委員長と一緒に、女子更衣室へ向かって歩いていった。
「ねぇ、つかさちゃん、手、洗いにいこ?」
そういえば、今日の授業は、男子が短距離走、女子は走り幅跳びだった。
おかげで、私のジャージ砂だらけ・・・・・・
手ももちろん砂でジャリジャリ。
「うん」
というわけで、私たちは、更衣室へ向かう途中にあるグラウンド脇の水場へ。
既に、何人か先客いて、それぞれに水を飲んだり、手足を洗っていたり。
「神宮寺さん、ここどうぞ!」
私が近寄った途端、男子の一人が、慌てて蛇口のひとつを譲ってくれた。
その男の子に、感謝のスマイル。あらら、その子、たちまち真っ赤になっちゃった。
うふ、かわいい。
「ありがとう」
ふっと見ると、一緒に水場へ来ていたはずの委員長、手も洗わずに、水場の脇で、タオルで汗をぬぐっている男子と、談笑しているし・・・・・・
「あれから島崎も、結構うまくやってるな」
私の隣で男子の声がした。ハッとそっちを振りむくと、視線が合った。
佐野君・・・・・・
「なぁ、最初、お前って、男のこと全然信用してないくせに、やたらと媚を売りまくる、困ったやつだと思っていたけど」
ちょ、ちょ、ちょっと! なによ、それ!
突然のことで、口をパクパクさせるばかり。反論できない。
「案外、いいところもあるんだなぁ~ こないだ、感心したよ」
え?
佐野君、口元は、皮肉そうにしているけど、目が笑ってる。
これって、私、褒められたの?
「もっと素直になれば、もっと魅力的になるのにな、お前って」
・・・・・・
な、なんなのよ! まったく、もう!
私は、今でも十分魅力的なの! いいえ、むしろ、魅力的すぎて困っているの!
なにが、もっと素直になれば、もっと魅力的になるよ!
ヘンなこと言わないで!
アンタになんか、私のなにが分かるっていうのよ!
これ以上、美少女戦士つかさちゃんを怒らせたら、どうなっても知らないわよ!
私、目に怒りを込め、佐野君をにらんでやった。
でも・・・・・・
「ほれ、これ使え、お前、タオルもってきてないみたいだし」
佐野君はというと、私の呪詛のこもった視線を意にも介さず、自分が使っていたタオルを押し付けてくる。
ったく! もう!
こんなタオルなんて、足元へ叩きつけやろうかしら!
でも、このタオル、男臭ッ!
よくこんな臭うタオルで、顔拭いたり、手をぬぐったりできるわね?
あっ、そうか! あなたには、きっと、嗅覚なんていう高尚な感覚器がないのね。この鈍感下等生物め!