似ている!? 1
私、私立神宮寺高校1年、神宮寺つかさ。
自分で言うのもなんだけど、美少女! それも、とびっきり!
今朝も、私が家を出ようとすると、家の前の通りに、花束を持った男たちが・・・・・・
私に恋する男たち。
ホント、しつこいんだから。
毎日、毎日、毎日、毎日・・・・・・
登校前、家を出た途端、『好きだ!』とか、『愛してます!』なんて、ありふれた言葉とともに、バラの花束をくれる。
バラって、綺麗だし、すごく素敵な香りがするから、嫌いではないのだけど、毎朝、両手に抱えきれないぐらいもらってもねぇ。
それに、バラにはトゲなんてものもあって、気をつけないと、指、引っ掻いちゃって、痛いんだよねぇ。
そういうところまで気を配らないで、バラの花束を渡しさえすれば、喜ぶだろうって期待するの、あさはかな考えだと思わないのかなぁ?
まったく! ホント男ってバカばっかし!
というわけで、今朝も、すこし痛い思いをしながら、男たちからバラの花束を受け取って、玄関先の水をはったバケツに放り込んでいく。
私が学校へ行った後、ママがそのバラ、近所におすそ分けするのだ。くれた人たちには悪いけど、私の手元には一本も残らない。
私、どちらかって言うと、バラよりタンポポみたいなありふれた花の方が好き。
だって、美の女神つかさちゃんと一緒だと、美しくはあっても、私ほどではないバラの花がかわいそうすぎるでしょう?
どんな花よりも美しい花の女王バラ。ところが、そのバラよりもはるかに美しい私。
私のそばにあったのでは、バラなんて、ただの雑草にしかみえない。
ふふ。ホント、私って罪な女!
このなにものをも寄せ付けない、すべてに超越した美貌、怖いぐらいだわ。うふふ。
こないだの観桜会で捻挫してしまった私。
とっくにギプスや包帯も取れ、杖なしでも普通に歩けるようになっている。
だから、今までみたいに、毎朝家を出て、歩いて学校へ向かってもいいのだけど・・・・・・
観桜会以来、我が家の前には、何人もの男たちが待ち構えているんだよねぇ。
さすがに、こんな状態では、人の何倍もかわいい一人娘の私を、歩いて学校へ行かせるのは危険だとパパもママも判断したみたい。
こないだだって、二階の私の部屋をのぞこうだなんて考えたバカな男が、家の前の電柱に登っちゃって、警察に連れて行かれちゃったし。
私の家の前の通り、昼も夜も異様な男たちがウロウロするようになって、ご近所の人たちに、気味悪がられてる。
警察に相談してみたりもしたのだけど、一向に改善されない。
パトロールしてくれるなんていっていたけど、日に何度か、パトカーが家の前を通り過ぎていくだけ。そんな程度じゃ、全然、効果なんてないよ。まったく、もう!
こんな状態で私がのんきに一人歩きなんかしちゃったら、男たちが、どんなバカなことを考えたりしちゃうか。
そういうバカな考えの犠牲に私だってなりたくないもん!
だから、このところ毎朝、パパの車に送ってもらって学校へ通っている。
今日も、パパと一緒にガレージへ向かって、助手席へ。
シートベルトをしめて、玄関の外へ出てきたママに行ってきまーすって手を振った。
出発進行!
さあさあ、男ども! 道をあけぇい! つかさ様のお通りだい!
どかねぇと、轢いていっちゃうぞ!