王国軍が攻めてきた1
【王国軍が攻めてきた1】
『ロレンツォの領地を没収する。直ちに城に出頭せよ』
そうきましたか。想定内だな。
『お断りします。ついでにこの領地、独立しますので悪しからず』
さっそく、バイシュの店を没収されたが、すでに引き払っていた。
森の中はアトラク軍団が警戒している。
水路からくることも十分考えられるが、
すでに防衛線をいくつも作ってあった。
『トーハウ川を多数の舟艇が北上中。その数、50隻』
アトラク軍団のもう一つの優秀さが明らかになった。
子蜘蛛は全国及び周辺にけっこう散らばっており、
通信ネットワークを築いていた。
だから、リアルタイムで周辺情報が手に入る。
『有難う。活躍してくれたお礼にクッキー詰め合わせ増量タイプ進呈ね』
子蜘蛛はこのクッキーが大好物になったらしい。
ケーキなんかよりもクッキーの方がいいという。
サクサク感がたまらんらしい。
アトラクさまも同意見みたいで、
『妾は両方好きだが、どちらかといえばクッキーじゃの』
まあ、両方渡しとけってことですね。
一隻に200人乗ってるとして、10000人の軍隊か。
首都で動員できる最大戦力に近いな。
人口三千人、自警団100人強の村に対して、えらく過剰戦力だ。
首都防衛を考えると、こっちに割く兵力が多すぎる。
他人事だけど、首都防衛大丈夫だろうか。
物資もちゃんと運んでいるのだろうか。
ああ、そういうこと考えない人たちだった。
軍隊は、バイシュ街の近郊にキャンプを張る。
総指揮官は次男のようだ。
『ラッキー。逃しはしないぞ』
僕は積年の恨みをぶつけるつもりだ。
母上の毒殺疑惑もあるからな。
今回は自重しないからね。
僕はロレンツォに転生したわけだけど、
元のロレンツォの記憶や感情も受け継いでいる。
『では当領地への攻撃とみなし、ラインを越えたらフォーメーションAで攻撃をしかける。全員配置につけ』
さあ、開戦だ
『よし、10000人の軍勢、ロレンツォの領地の隣地に到達したぞ。さて、バイシュ領主よ。聞くところによると貴君の父上はロレンツォにやられたと聞くが』
『はい、確とした証拠があるわけではありませんが、まず間違いないかと』
『では、この戦い、父上の名誉回復の戦いでもあるな』
『私ども、2千人の精鋭を連れてまいりました。必ずや武功を遂げる所存です』
『宜しい。では作戦通り、2000人は川から。8000人とバイシュ領2000人は森から進軍するぞ』
『森から行くときは、十分お気をつけ下さい。森には恐ろしい怪物が潜んでいると噂されています』
『もう、臆病風かな?』
『滅相もございません。念には念をと』
『良かろう。では出陣じゃ』
『『『『『おー!!!』』』』』
現場の様子は、子蜘蛛が逐一報告してくれる。
バイシュ領には子爵事件の余韻が残っていること、さらに森の怖さをよく知っているので、バイシュ領出身の兵隊は及び腰なのが多い。
兵隊っていっても、殆どは農民兵だ。
とりあえず子爵領の後継者も参加するらしい。
こちらは敵討ちでやる気まんまんなようだ。
王国軍は、森からと水運を使っての2方向から村を目指す。
『アトラクさま。森の中では僕が攻撃するまで兵隊から1km以上離れていてね。敗走したら、兵士を捉えて下さい。少しは食べてもいいけど、殆どは生かしておいてあげてね』
食べられちゃう兵士さん、ごめんね。
まずは、川方向からくる軍団。その数2000人。
小舟に乗り込んで北上してきた。
さっそく、防衛ラインをオンにする。
これ以降、許可なく領内の水域に入ると攻勢魔道具が炸裂する。
『見ものだよね、王国軍の奴ら。防衛ラインをくぐり抜けたら大したもんだ』
川には多数の魔道具が埋め込んであり、腕輪がないと川が大渦や竜巻が襲うようになっているのだ。しかも、防衛ラインは5つある。数万人の軍勢でも持ちこたえられるはずだ。
『ふっふっふ、魔力の発現しないできそこないの三男王子め、我々が近づいているのに気づいておるのか、それともブルってるのかな?』
現状では、殆どの人々には僕は魔法の発現しない愚鈍王子として有名だ。
『気付いておらんでしょう。奴の村は300人ほどだといいます。周囲の情報収集まで手は回せんでしょう』
『いや、愚鈍の三男王子のこと、のんびり昼寝でもしてるんじゃないですか?』
『ワッハッハ、間違いないの』
ザップ村は3000人ほどに膨れ上がっているのだが、これまた多くの人には情報がアップデートされていない。
船上の王国軍が戦勝気分で盛り上がっていると突然、
『ゴー!!!』
『何事だ!ああ、舟が』
第一防衛ラインに到達した王国軍団。
魔道具に引っかかって、半数があっという間に渦に巻き込まれて沈没した。
魔道具の魔力が切れたため、半数が沈没から免れた模様。
『なんだなんだ、こんなところで大渦の発生とは!』
『指揮官様、半数が沈没してしまいましたが、いかが致しましょう』
『進軍に決まっとる。大渦で半壊して撤退したなどと、恥ずかしくて報告できんだろ!』
『指揮官様、これは自然災害ではありませんな。敵の魔法攻撃かと』
『そんなことあるか』
『当方の魔導士が魔力を感知しました。かなり大きな魔力で、おそらく魔道具が川に仕込んであるようだと』
『罠と申すか。愚鈍の三男には魔力はないはずだ』
『敵にはかなり優秀な魔導士がいるとしか考えられませんな』
『ううむ、各船は生き残りを救い上げた後、敵地に向け進軍!警戒を厳重にせよ。特に魔導士、川に潜む魔道具に気を配れ!』
この判断が正しいのかどうかはすぐに判明する。
第2防衛ラインで残りが殆ど大渦と竜巻に巻き込まれて沈没してしまった。
『なんてことだ。殆ど舟がのこっておらんではないか』
『撤退するしかありませんか』
などと混乱していると、遠くから数個の火の玉が飛んできた。
『『『ドガーン!』』』
残存する舟があっという間に燃え上がり、沈んでいく。
警備隊所属の河川用舟艇に撃破されたのだ。
河川用舟艇に積まれている魔導銃は有効射程500m。
遠方より火球弾などを発射する。
1000t級の戦艦でも一発で撃沈する。
川に投げ出された敵兵は何割かは流されてしまった。
岸にたどりついたものは指揮官クラス含めて遁走した。
しかし、逃げた方向がまずかった。
森の中に入ってしまったのだ。
さて、彼等の行方はどうなるのであろうか。
ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。
励みになりますm(_ _)m




