霧とジル
ジルとムサシは、雲に乗り上空から城を取り囲む霧を見下ろしながら話していた。
「霧の中は、魔力にやられてビリビリ痺れてくるからな。長時間はいられないんだ」
「厄介な霧だな……。なんでこんなに出てるんだ?」
「誰かが力任せに魔力を噴き出させてるのさ。霧の中で魔物が生まれて、また増える。霧をなんとかしないとキリないぜ。」
「こんな時にダジャレか?」
「ちげーよ!」
「で、どうしたらいいんだよ」
「壊すのさ。アレを。」
ムサシがあごで示した先には、黒い霧が濃くなって渦巻いている所があり、その中心には、何か銅像のような物があった。霧が邪魔をしてよく見えない。
「アレが諸悪の根源か?」
「誰かがアレを使って霧を振りまいているのは間違いないな」
「ふーん」
「じゃ、行ってこーい!」
草原の上にポンと置かれて、ジルはあっけに取られた。ムサシはさっさと上空に戻って行く。
「うわーっ、霧濃い!やっぱビリビリする!痛てててて!」
と叫んでいるムサシの声が上空に上がっていく。
「?俺、何ともないぜ?」
「だろーな!後は頼んだぜー!」
ーーーいや、武器も何も持ってないけど大丈夫か俺?
まあ、魔力が効かない体質らしいから、魔力の霧はなんともないがな!皆がビリビリして動けないって言ってる霧がな!俺様には空気だな!やっぱすげえのか俺!
と思いながら霧の吹き出している物に近づく。するとそれは霧に纏わりつかれながら口から霧を吐き出し続けているドラゴンの銅像だった。これを壊せばいいんだな。
とりあえず、そのへんの棒を拾って叩いてみたが何ともならない。まあそうだろう。でもそのとたんに黒い霧が一斉に遅いかかってきた!ブワッと飲み込まれてーー!
何ともなかった。
でもムカついたので、怒りを込めて渾身のグーパンチしてやった。
そのとたん、銅像が眩しく発光し、バラバラと崩れて落ちた。
銅像の崩れた後に、ころんと、小さいビー玉の様な赤い石が転がっていた。
俺はそれを拾う。何か前にもこんな事あったな、とか思いながら。
小さい赤いトカゲが足元に来て、俺の靴に頭をツンツンとぶつけた。それから口を開ける。
「これ、欲しいのか?やるぜ。俺の子分になるならな。」
ふざけて言いながら、赤い石を口に入れてやる。前は、ビー玉を飲み込んだ猫は王子だったなと思い出しながら。
トカゲはキラキラと光を纏いながら大きくなり、人の背を超え、岩を超えーーー赤く輝く美しいドラゴンに、なった。
「おおせの、ままに。」
ドラゴンに似つかわしくない長く美しいまつ毛を震わせて、目を潤ませながらドラゴンが言った。




