霧の王城(ミオ)3
ミオの周りにいた妖精達は、次々と仲間を癒した。何故かいつも以上に回復した仲間達は、力を試すかのように張り切って後から来た者達を癒し回復させたが、それによって治癒した者達もまた通常より少しずつ羽根が長かったり、美しくなったり、力が強くなったりしていた。
「ミオ!ありがとう!すごいよ!」
回復した後大切な仲間を癒した一人の妖精が、感極まってミオにフワッと近寄ると、頬に祝福のキスをした。
ミオは、誰かの役に立てたようであるのが嬉しくて、妖精さんがキスしてくれたのが嬉しくて、それからキラキラした妖精さんが可愛くて、きゅうううーーんと胸が高鳴った。
いや、抱きしめてギュウギュウしたい。でも妖精さんがつぶれてしまうから我慢我慢。
感動のあまり涙目で、それでも目いっぱいの笑顔を妖精さんに向ける。
ーーすると、妖精さんはびっくりしたような顔をすると、ますます光りだし、羽根がまたちょっと大きく、何だか服も豪華になって、光の粒が溢れだし始めた。
周りの妖精達は、一瞬びっくりして目を見合わせると、
「ミオ!私も!」
「僕も僕も」
「ありがとう!」
と次々にミオの頬に祝福のキスをし、泣き笑いのミオの周りで、最新の形態へと進化していった。
……帯電体質で、良かった。多分、これは、帯電した愛情が、関係あるんだろう。たまに気分で放出されるってアカリナさんが言ってたし。特に意味のない体質だって思ってたけど、役に立って、妖精さん達が喜んでくれて良かった。
その後、黒い霧の中から傷だらけになって出てきた動物達を、妖精達は驚異の治癒力で次々と癒していった。最新形態の妖精達によって回復した動物達は、体が一回り大きく、角がある者は長く、牙や爪は鋭利な刃物の様になった。
同盟国の騎士達も、霧の中から手足が痺れて戦いの傷を抱えて這い出して来る。妖精達が癒し、霧の中で動けなくなっている騎士がいれば動物達が背中に乗せたり口に咥えたりして助け出してきた。騎士達は、形態が変わる事はなかったが、回復の速さに驚き、疲れも取れた事を不思議に思った。実は薄くなった髪がフサフサしたり、持病の腰痛が治ったりしているのだが、気が付くのはもっと後だったりする。
周りが次々に治癒しているのを見て、ミオが、良かった!と同意を求めて振り返ると、ユーノは切り株をテーブルにして一心不乱に何かを書いていた。文章を書き…絵まで描いている。
「展開が…早くて…!描ききれない…!」
と、ぶつぶつ言いながら描いているユーノをジルが呆れて見ている。
ふと、一人の妖精さんがユーノに近づくと妖精の光の粒を振りかけた。
ユーノの手が、残像が見えない程早くなった。はかどる。次々と絵を仕上げ、文章を書いていく。
ユーノは顔を上げて、その妖精さんを見た。「グッジョブ!」と親指を立てると不敵に笑う。妖精さんもニヤリと笑うと、多分意味はわかってないが同じ動作を返す。心の通じ合った瞬間だった。
「ジル!行くぜ!来い!」
急に、頭上から声がした。ムサシだった。
ばあちゃんが龍に乗っているのかムサシは今は小さい小回りのきく雲に乗ってヒュンヒュンと飛び回っている。
周りの動物達や騎士達がどよめき、色めき立つ。「ムサシーー!」と太い声で掛け声も飛ぶ。皆の歓声に「いやいや。人気者は辛いねえ」と手を振って答えるムサシ。
何がどうして人気者に?とジルは思ったが、実はムサシは突入直後からチョコマカと上空を飛び回り、あっちを助けこっちを助け、神出鬼没の働きで、もはや英雄となっていた。何だろうこのカリスマ性。
ジルは、上空のムサシに答える。
「俺はミオを守らないと!」
「守る為に行くのさ!来い!」
一瞬、迷ったジルはミオを振り返る。
「私は、大丈夫!モフモフちゃんも妖精さんも、ユーノもいるから!…でも、気をつけて行ってきて!」
ジルはうなづく。ムサシがすべる様に地上近くまで降りて来る。
「乗れ!」
ジルは黙って乗った。
でも心の中は、雲に乗っちまったぜラッキー最高!とか思っていたのでした。




