「アメリカかぁ~。面白そうだねぇ」
6月27日(土) 横浜ダンジョン
「おっ、パイセン達、今日から沖縄の最難関進めるみたいだぞ」
柳が配信コメントを眺めながら声を上げた。
『ブレーカーズとバスタード、今日から沖縄入りか!』
『合宿の準備も兼ねて攻略開始らしいね』
『暫定Aランク組の本気が見られるのか』
『ティンカーベルだけじゃなくて、あっちも期待してるぞ!』
『同じ学校から強い冒険者が何組も出てくるの、普通に熱い』
『うちの学校、冒険者の層が厚すぎない?w』
「あぁ、聞いたぁ。合宿で使う予定の11層まで記憶させるみたいだねぇ」
乙羽も知っていたようで、のんびりと答える。
「まぁ、私達が改めて11層まで行く必要がないのは助かるよね」
琴がうなずいた。
『確かに、合宿で1層からやり直すのは時間がもったいない』
『先輩たちが先に進めてくれるなら助かるな』
『これで合宿は最初から実戦に集中できるわけか』
『ティンカーベルは横浜、先輩組は沖縄。どっちも頑張ってほしい』
「じゃあ、合宿の時は11層からすぐ開始できるってことね! それなら横浜ダンジョンに集中できるわ!」
梓も納得した様子だった。
政宗たちも、合宿の準備を進めているらしい。これなら合宿当日に余計な時間を使わずに済みそうだ。
『ブレーカーズもバスタードも、暫定Aランクの実力を見せてほしいね』
『でも配信で全部見せちゃうと、競技会で手の内がバレるんじゃ?』
『そこは政宗たちも考えてるだろうな』
『ティンカーベルも先輩組も、同じ学校だからまとめて応援したくなる』
『わかる。もう学校ごと箱推しだわw』
『後輩が横浜を進めて、先輩が沖縄を進める。いいじゃないか!』
「ところで、オトハ達はいつ学校辞めるの?」
ヴィクトリアが何気なく尋ねた。
「簡単に辞められねぇだろ! 今、好きにやらせてもらってるんだし!」
柳が即座に突っ込む。
「んぅ、そうだねぇ。自由登校にしてもらってるし、学校のことを放り出すわけにはいかないよぉ」
乙羽も苦笑した。
「そもそも、まだ卒業したわけでもないしね」
琴が補足すると、ヴィクトリアは少し考えるような仕草を見せた。
「Then... how long can I stay in Japan?(それなら、私はいつまで日本にいられるのかしら?)」
『翻訳さん:ヴィクトリアさんは、自分が日本に滞在できる期間について尋ねています!』
『そういえば、ヴィクトリアさんはアメリカから来てるんだった』
『Sランク冒険者でも、ずっと自由に滞在できるわけじゃないのか』
『ティンカーベルと一緒にどこまで行けるんだろうな』
「んぅ? 師匠はいつまで日本にいられるのぉ? 私達とずっと一緒にいられるわけじゃないんでしょぅ?」
乙羽が尋ね返す。
「それなのだけど、横浜の冒険者協会では、行けるところまで行ってほしいみたい!」
ヴィクトリアは明るく答えた。
「攻略に目途が付くまでは一緒ってことね!」
梓がすぐに理解する。
「ダンジョンが現れてから、そういう海外の滞在ビザも融通が利くようになったみたいだしね」
琴も事情を補足した。
ダンジョンの攻略は、一国だけで完結するものではない。強力な冒険者が国境を越えて活動することも珍しくなくなり、各国の制度もそれに合わせて変化しているのだろう。
『世界中の冒険者が協力する時代なんだな』
『Sランクが海外から来てくれるのは日本にとっても大きい』
『横浜ダンジョン攻略に協会も期待してるってことか』
『これはヴィクトリアさんの滞在延長を願うしかないw』
「それでも定期的にアメリカに実績を報告しないとダメなのよ?」
ヴィクトリアが念を押す。
「何もしなかったら帰されるってことか!」
柳が納得したように声を上げた。
「まあ、そういうことね。私もアメリカの冒険者なのだから、向こうへの報告は必要なのよ」
『なるほど、アメリカ側にも活動報告が必要なのか』
『そりゃSランクが長期間いなくなるんだから、向こうも気になるよな』
『日本での実績もアメリカにとって大事な情報になりそう』
『つまり、ヴィクトリアさんにはどんどん攻略してもらわないと!』
「アメリカかぁ~。面白そうだねぇ」
乙羽は、まだ見ぬ国に思いを馳せるように呟いた。
「オトハ、アメリカに来たいの?」
ヴィクトリアが尋ねる。
「うん! 師匠のいた国だもんねぇ。いつか行ってみたいなぁ」
「Then I'll show you around!(じゃあ、私が案内してあげるわ!)」
「ほんとぉ? 約束だよぉ!」
乙羽が嬉しそうに笑う。
『翻訳さん:ヴィクトリアさんが、いつかアメリカを案内してくれるそうです!』
『おお、海外編のフラグか!?』
『まずは横浜ダンジョン完全攻略だな!』
『ヴィクトリアさん、しばらく日本にいてくれそうでよかった』
『アメリカ遠征編も見てみたいw』
『ティンカーベルが海外に行ったら、先輩たちも一緒に行くのかな?』
『学校組の海外遠征とか、絶対面白いだろ』
『箱推しとしては全員の活躍が見たい!』
「おーい、アメリカ旅行の話は攻略が終わってからにしようぜ!」
柳が先頭から声をかけた。
「はーい!」
乙羽は元気よく返事をして、再び前を向いた。
『柳、現実に引き戻すの早いw』
『そうだぞ、まずは横浜ダンジョンだ!』
『先輩組も後輩組も、どっちも応援してるぞ!』
『この学校、卒業までに何人Aランクになるんだろうな……』
今はまだ、目の前のダンジョン攻略が最優先。
けれど、ヴィクトリアと一緒に進む未来は、横浜ダンジョンの先にも広がっているのかもしれなかった。




