彼女の名前と俺の名前
先日、いや1週間ほど前のことだろうか。この王都の下町と呼ばれるところに盗賊が現れた。最初は兵士の人が捕まえるだろう、といつも通り城で働いていた。
そして、城に兵士がやってきた時、捕まったのか。と思った。だがそれは全く違った。兵士の人は来るなり、次のように言った。
「大変です!最近現れた盗賊ですが魔法を使うようで全く歯が立ちません。属性も2つあるようです。」
「その属性は!」
「はい!風と水だそうです。」
「そうか、なら…ブランドンとニコラス、お前たちが入って捕まえろ。いいな?」
「「はい!」」
気づいた人もいるだろうが魔法というものは一部の人しか使えない、しかもほとんどの人が貴族だ。つまり、兵士というものは魔法の使えない者がなる職業、騎士というものは魔法の使える者がなる職業のことだ。極たまにだがニコラスのように平民でも魔法が使える者もいる。
そして、属性についてだが、属性というものは大きく分けて火・水・風・土・雷の5種類に分けられる。ちなみに滅多にいないが闇と光という属性の人もいる。
普通は属性は1人1つしか持たない。だが、ごく稀に今回の盗賊のように2属性以上持つ者も現れる。
それと、魔法というものには相性がある。火には水、水には雷、雷には土、土には風、風には火 といったように相性の良し悪しがある。
今回の盗賊の属性が風と水ということだったので、雷の俺と火のニコラスが選ばれたのだ。
早く捕まえなければ大変なことになるかもしれない。
というわけで町を見廻る。…うん?彼女は確かパン屋の従業員の子だ。1人で歩いているのは危険だと思い、声をかける。
「こんにちは」
彼女は驚いた様子でこちらを見て、挨拶を返してきた。
「…はっ こんにちは」
「ごめんね。いきなり話しかけて。」
「大丈夫です。」
そんな彼女にニコラスが自己紹介をする。
「えっと、俺はニコラスっていうんだ。…いつもパンを買っているこいつはブランドン、これでも一応、騎士だ。」
その後彼女も自己紹介をする。
「遅れてすみません。私の名前はアンナです。いつも私の家のパンを買って頂き有難うございます。」
アンナっていうのかいい名前だ。
彼女は騎士といった俺たちがどうしてこんなところにいるのかと聞いてきた。
「そういえば、どうして下町などにいるのでしょうか?騎士様といえば城の警備をしているはずですが。街の見廻りは兵士の仕事では?」
なんて答えたらいいか、と考えているとニコラスが答えてくれた。
「あぁ、最近ここら辺に盗賊が現れたのは知っているだろう?」
彼女が首を縦に振ったので続きをいう。
「実はこの盗賊が魔法を使うということで俺たちが見廻りをしているというわけだ。」
しかし、盗賊が現れたと知っていたのにどうして外に出ているのだろうか。早く帰ったほうがいいと思い、帰るよう促す。
「そういうわけだから今日はもう家に帰ったほうがいいだろう。」
「実は、図書館に行こうと思っていたところでして、すぐそこなので行ってもよろしいでしょうか?」
だが、彼女は近場の図書館に行きたいといい、言ってはダメか、と上目遣いで聞かれる。ダメということができず
「っ!…まぁそのぐらいだったらいいだろう。だだし、16時までには家に帰るんだ。いいな?」
といってしまう。そういうと彼女は嬉しそうに微笑んで
「はい!では私はこれで」
といって、図書館へ向かって行った。まぁ、少しぐらいだったら大丈夫だろうと思った。
あの時何を言われても帰しておけばよかったと後悔するのはもう少し後の話だ。
次回は14日です。