赤を殺した者(11)
悠真は先代紅から赤の話を聞いた。先代の紅がどのような人だったのか、先代の紅が理想を追い求めたことを、未来に賭けていたことを。
そして一つ。
赤丸は先代赤丸の息子だ。ならば、父は誰になるのか。義藤に先代紅を殺した者を秘密にしておくということが、全てを物語っているように思えたのだ。悠真に兄弟はいない。しかし、これが兄の優しさであり、兄弟同士の思いやりなのかもしれない。そう思える温もりが、赤丸にはあった。
赤丸は紫の石を取り出した。そして、おもむろに紫の石を取り出した。悠真が立ちすくんでいると、赤丸は柔らかく微笑んだ。
「赤星から貰ってきたのさ」
そして、紫の石に語りかけた。
「紅、紅、聞こえるか?」
そして赤丸は続けた。
「目が覚めたら一人だろ。追いかけたのさ。赤星をな。血の犬の足跡を追いかければ、悠真にたどり着く。――赤星か?赤星は毒にやられた。薬師に救ってもらったのだが、まだ薬師と離れるべきでなかったのかもしれない。黒の色神が白の石を持っていることを願うだけだ。ああ、黒の色神の身体は見つけた。身体はと言ったところだ。野江は何と言っている?黒の色神をみつけた、とそういうところだな。――そうか、良かったな。源三を見つけたんだな。こっちもそちらへ行こう。俺は義藤や秋幸と顔を合わせることが出来いから、良いごろに悠真一人で行かせる。俺は赤星を連れて、影から援護する。――赤星には恩がある。両親の恩もある。赤星の最期ぐらい、看取ってやらなきゃいけないだろ。そっちへ向かう。黒の色神の身体を持っていく。どこにいる?そうか。野江や都南を呼び寄せろ。黒の色神の魂と一緒にな。何かあれば連絡をくれ」
赤丸はそこまで言うと、一つ息を吐いた。深い傷を負った赤丸は、それでも強さを失っていない。
「ねえ、赤丸?」
悠真は赤丸を見た。赤丸が一緒だと思うと、安心できた。赤丸の持つ深い優しさも、赤丸の持つ強さも、悠真を安心させるには十分だったのだ。
「行くぞ、悠真」
赤丸は身体を引きずるように動き、黒の色神の体に手をかけた。そして、赤丸が黒の色神の身体を動かそうとしたとき、赤と黒がはじけ跳んだ。火花のように赤と黒がせめぎあい、地響きが響いた。赤と黒は決して合い慣れない存在だ。赤丸の持つ一色は赤だ。赤丸の一色は澄んだ赤色だ。川のせせらぎのように、濁りのない色。穏やかに流れているかと思いきや、突如豹変し濁流となる。悠真は紅を知らなければ、赤丸を赤の色神と誤解していたかもしれない。紅のような鮮烈さは無いが、赤丸の純度の高い赤色は彼の強さの象徴だ。
だからかもしれない。赤丸の一色と、黒の色神の一色が反発したのだ。反発した二つの色は、強大な力を持ち周囲に放たれた。