赤を殺した者(10)
言葉の選択が、声色が、口調が、表情が、赤丸と義藤は違う。悠真の背に汗が流れた。それは、赤丸への恐怖だ。味方であると分かっているから平気なだけで、もし敵だとすれば恐ろしいことこの上ない。そして、赤丸は瑞江寿和に囁いた。それは、まるで死刑宣告のようであった。
「もう、終わりだ」
瑞江寿和は狂ったように叫んだ。
「儂は瑞江寿和じゃぞ!あの方に従い、汚い仕事をしてきた。神殺しも、あの方の指示に従ったのみ!」
赤丸は冷たく言った。
「先の紅の殺しを認めたな。誰が命じたのか、じっくりと教えてもらうさ。あんたが殺したのは、先の紅であった一人の男と、紅を守った術士らだ。火の国の未来を歪め、今の紅の未来を歪め、俺たちの未来を歪めた。あんたは鍵だ。紅が官府に殺されるなんてことがないような、そんなことがないようにな」
直後、赤い光が輝いたかと思うと、瑞江寿和は倒れていた。
赤丸は大きく咳き込むと、膝をついて蹲った。咳き込んだ赤丸は、それでももがくように立ち上がった。そして赤丸は悠真に歩み寄ると、そっと悠真の肩に手を乗せた。
「起こしてくれれば、良かったのに」
そっと笑った赤丸の表情はとても柔らかく温もりを持ち、先の瑞江寿和を追い込んだ者とは別人のようであった。
「悠真」
赤丸は悠真を呼び、悠真は赤丸を見た。赤丸は柔らかい笑みの中、一つ言った。
「黙っていてくれるか?」
「え?」
何のことか分からず、悠真は目を見開いた。すると赤丸は一層柔らかい笑みを浮かべた。
「奴が先代の紅暗殺に関わっていることだ。義藤は優しい奴だから、黙っていてやってくれ」
赤丸はそう言うと、そっと悠真から離れた。