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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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赤を殺した者(9)


――恐ろしい。


悠真は身を引いた。瑞江寿和の色が悠真を飲み込もうとしている。


――染められる。


赤でも、黒でも、白でも、燈でもない。表現しがたい恐ろしい色に染められる。侵食され、支配される。恐怖で悠真の足は竦み、恐怖で悠真の心は凍りついた。悠真の目には色が強く写り、他の景色は見えない。瑞江寿和の顔は消え、色だけが強く写った。その中で、悠真は赤を見た。赤い色が醜悪な色を切り裂き、一本の線を引いた。線の中から短刀が出てきたかと思うと、色は掻き消えた。


「誰を殺したんだ?」


酷く静かな声が響いた。短刀は瑞江寿和の背後から迫り、喉元に突きつけられていた。瑞江寿和の背後から見えるのは、水の滴る男。刃物のような顔立ちをして、目には強い赤色を宿している。

 瑞江寿和の手が空を掻いた。そこにもう一度、声が響いた。


「誰を殺したんだ?」


刃物の先は瑞江寿和の喉元に食い込んでいる。答えられない瑞江寿和を横目に、再び声が響いた。


「俺もあんたと同類だ。殺すことを恐れない。真に守るべきもののためなら。あんたは、なぜ殺したんだ?あんたは何のために殺したんだ?」


瑞江寿和は震えながら振り返った。突きつけられた短刀は寿和の首の皮膚を薄く切り赤い線を作った。振り返った瑞江寿和は怯えていた。


「義藤」


瑞江寿和は言い、彼は笑った。義藤と同じ顔をしているけれど、一色が違う存在。優しいが強い赤色。間違いない。深い優しさを持っているのに、決して信念を歪めない存在。そう、それが「赤丸」だ。赤丸は冷徹に、瑞江寿和を追い込んだ。

「知っているか?彼は黒の色神だそうだ。そう、宵の国を統一した優れた黒の色神。悠真が言うんだ。間違っていない。あんたが、招いたんだな。この官府へ。この惨劇の全ての始まりは、あんただ。火の国を売ったのは、あんただ。あんたは、火の国を滅ぼしかけたんだ。そして、黒の色神を追い込んだ。黒の色神の名を呼ぶな。紅と等しく高貴な方なのだから」

そして、赤丸は瑞江寿和の耳元で囁いた。

「もう、終わりだ」

そして、もう一度。

「もう、終わりだ。俺がしっかりと報告しよう。この事態を招いたのは、瑞江寿和だと。そして、瑞江寿和はかつて人を殺していると。紅は俺の言葉を信じる。官府も、あんた一人のために紅と敵対したりしないだろうな。切り捨てるさ。官府はあんたを切り捨てるさ。まるで、蜥蜴の尻尾切りだな。あんたは地の上でのたうちまわる。醜くあがく、その行為は、紅の目を官府からあんたへ引き付けるだけで、官府はそれを望んであんたを切り捨てたとも知らずにな」

赤丸と義藤は違う。

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