表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
286/785

赤を殺した者(5)

 答えを教えてくれる人が欲しかった。悠真は何をするべきなのか、教えて欲しかった。


「赤星」

悠真は赤星の名を呼んだ。何度、名を呼んでも赤星の返答はない。荒い呼吸が今にも消えそうに響いているのだ。


――前へ進め。


突如、濃厚な赤の気配が広がり、悠真の目の前に赤が立っていた。

「星が……」

悠真は赤星を抱きしめた。赤星の目は薄く開いているが、輝きが乏しかった。今にも赤星の命が消えそうで、悠真は辛かった。悠真の心が痛んだ。

――犬がどうしたと言うのじゃ?

赤が言い放った。切れ長の赤の目が、悠真をしかと捉えていた。

――犬がどうしたと言うのじゃ?

再度、赤が言った。まるで、赤は赤星のことなど、どうでも良いと思っているようであった。

「星の様子が変なんだ。俺は……」

悠真が赤星を助けたい、という前に赤は悠真の言葉を遮った。

――小猿がするべきことは、助からぬ命を助けるために泣き叫ぶことかえ?

赤の言葉は痛烈に悠真を追い込んだ。悠真を突き放し、残酷に現実を伝える。

「俺は」

助けたい。死なないで欲しい。その言葉が悠真は言えなかった。赤の濃度が色濃く、悠真は萎縮していたのだ。それに、赤の言葉が真実であると、悠真は分かっていたのだ。

――黒の色神を救え。黒の色神は優れた力を持つ男じゃ。代々色神に恵まれぬ黒が、心から信頼している男じゃ。黒の色神が命を落とすことは、火の国のためにならぬ。黒の色神の力は、きっと紅を救うじゃろう。

赤が悠真の頭にそっと手を伸ばした。赤く塗られた長い爪。赤は人差し指を立てて悠真の額を指した。

――先代の紅は優れた男じゃった。わらわも、先代には長く生きて欲しかったものじゃ。じゃが、先代は不運な男での。あのころは優れた術士が少なかったのじゃ。先々代の紅の暴挙で、赤影の多くが死に絶え、先代の仲間は少なかったのじゃ。当時、野江や都南はまだおらんじゃった。柴も幼かった。惣次も術士として優れた男であったが、どちらかと言えば教育者向き。実践で戦うには向かぬ。悠真、信じられるか?若き柴一人で陽緋と朱将を兼任しておったのじゃから。朱護頭さえおらぬ状況じゃ。信じておった朱護頭が先代を殺そうとしてから、先代は慎重になっておったのじゃ。先代は掛けておった。これからの未来に、未来のために若い術士を育てることに心血を注いだのじゃ。義藤、野江、都南、佐久、鶴蔵、柴、春市、千夏、秋幸、冬彦、そして赤丸。紅と同世代の若者が、紅を信じて戦っておる。何とも頼もしいことでないか。先代が育てたのは、柴、野江、都南、佐久、鶴蔵。先代が紅を救っておるのじゃぞ。先代は不運な男じゃが、希望を未来に繋いだのじゃ。黒の色神も同じじゃ。未だ、仲間に恵まれぬ色神。一人で戦うには辛かろう。じゃが、今の黒の色神は優れた男じゃ。今の黒の色神が踏ん張り、未来へ希望を繋がなければ、宵の国は再びすぐに戦乱に陥るじゃろう。悠真、黒の色神の生死には、宵の国の未来がかかっておる。黒の色神を救え。ここで命を落とすべき男ではあらぬ。わらわには重なって見えるのじゃ。先代の紅と、今の黒の色神がの。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ