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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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迷える黒(18)

赤菊は赤丸や赤星とは一線を引いている。術士が皆、戦いに適していると言い切ることは出来ない。戦いを苦手とした術士も多く存在する。術士であると、必然的に争いに巻き込まれる。望もうと、望まないと、術士の才覚に恵まれてしまったのだから仕方ない。戦いに適さない術士は、赤菊のように優しすぎる者、術士の才覚に恵まれているのに身体的に障害のある者、戦いに適さない者はそれでも争いに巻き込まれる。赤菊もその一人だろう。

「野江、都南、行け」

柴が笑った。大きく、広がりのある笑いだ。野江と都南は柴に対して深く頭を下げた。

「頼んだ」

「お願いするわ」

野江と都南は、赤菊に言い、ゆっくりと立ち上がった。すると、柴が二人を呼び止め、言った。

「野江、都南。紅を死なせるな。紅は火の国を変える力を持つ。そして、お前たちは紅を支える力を持つ。優れた紅が優れた仲間に恵まれる。こんな好機は滅多にないはずだ。俺は、お前たちを信じている。野江の術の力を、都南の剣術を、佐久の知識を、鶴蔵のからくり技術を、義藤の優しさを、俺は信じている。お前たちが紅を支えろ。赤影と共にな。大勢が命を落とし、弱体化した赤影を滅ぼさず共に歩め」

柴の言葉は広がりを持って響き、野江と都南は苦笑した。

「まるで、遺言のようなことを言わないでくださいな」

野江が笑い、都南は無言で手をクロウに差し出した。乗れということなのだろう。クロウはその手を見て、柴を見た。そして、気づいた。


――柴は命を落とすだろう。


クロウは確信した。柴に残された命は短い。それは、イザベラの毒が身体に回っているからだ。柴から発せられる色が変わっている。赤に黒が混ざり、濁っている。黒は赤を喰い始めたのだ。確かに、薬師はイザベラの毒を解毒する薬を見出した。そして、柴は一時的に回復した。


――だが……


クロウは心の中で柴に謝罪した。薬は定期的に注入しなければ効果が無いのかもしれない。だから、柴の中の黒が暴れ始めた。


――柴は死ぬ


クロウは柴を見て、彼の強さを感じた。毒が再び回っていることに、きっと柴は気づいている。黒と混じり濁る赤が、凛とした清清しさを持っているからだ。しかし、赤は喰われるだろう。


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