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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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迷える黒(12)

そもそも、子供向けの歌は教訓めいた恐ろしいものが多い。宵の国の子供は、この歌を歌いながら、野を駆けるのだ。歌を歌いながら追いかけっこをするのだ。大人は子供に教えるのだ。

(そんな悪さをしていると、迷子の羊になっちまうよ)

(迷子の羊を助けちゃいけないよ)

歌の教訓は二つ。一つは迷子の羊にならないようにしなさい。そしてもう一つは、信じられない者を助けちゃいけない。それが、宵の国の民の本質だ。信じられない者を助けたりしない。個人主義で、自らのために生きる。

歌で子供に教えるのは、宵の国の人間としての国民性。思えば、クロウも幼い頃に歌っていた。ヴァネッサと一緒に歌っていた。

――迷子の羊は何をして嫌われたのか。

幼心にそんな疑問を抱きながら。


まるで、今のクロウは迷子の羊だ。火の国の民に嫌われて、一人ぼっちで答えと救済の道の無い闇を迷う。誰も助けちゃくれない。クロウは嫌われ者だから。火の国の民もクロウを助けちゃいけない。クロウは信じられない人だから。


「都南、野江。そして、黒の色神。皆、落ち着け」


柴がゆっくりと口を開いた。柴の声は大きく広がりを持ち、不思議な温もりを持っていた。柴は大きく笑った。包み込むような温もりと大きさがあった。


――大きい。


クロウは柴を見て、そう思った。宵の国では、心の狭い者のことを「小さい」と言う。器が小さいと言うのだ。柴は大きい。雰囲気も、心も、全てが大きい。柴なら受け入れてくれるだろう、という雰囲気があり、他者を安心させるのだ。柴が激昂する姿を想像できない。柴は広がりのある声で続けた。

「野江、都南。俺は黒の色神を信じている。佐久や紅が言っていただろう?黒の色神は宵の国と統一した実力者。戦乱の国として有名な宵の国が平定されたことは、鎖国している火の国の民である俺たちでも知っている。――想像してみろ。もし、黒の色神が今倒れれば、宵の国はどうなる?再び戦乱に陥るのか?想像してみろ。再び戦乱に陥った宵の国で命を落とす多くの民のことを。――俺たちに紅が必要なように、宵の国の民にも黒の色神が必要だ。ここで死なせることは出来ない」

柴に反論するように野江が言った。

「確かに、黒の色神が宵の国を統一した実績を、あたくしも知っているわ。でもね、黒の色神が火の国を喰おうとしたことは事実なのよ。紅の命を狙っていたのよ。そんな黒の色神を救う義理があって?」

野江の言葉は最もなことで、クロウでさえ、ここで彼らに殺されても仕方ないと思っている。


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