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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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迷える黒(8)

クロウが見たのは、野江の背中だ。火の国の民は基本的に小柄だ。その中でも平均的と思われる野江の体格は、宵の国の女性を見慣れているクロウにとっては、小さいという印象だ。ヴァネッサよりも小さい。その小さな野江の背が強く、逞しく見えるのは、彼女が彼女なりの強い意志と覚悟を持っているからだ。意志と覚悟を後押しするのが、天性の才能と言ったところだろう。戦っているのだ。火の国の中で。

「助けろと言われたから助けるのよ。仲間だと言われたから、今のところは信じているの。でも、あなたが逃げたりしたら、あたくしはあなたを敵だと判断するわ。だから、逃げないでちょうだい」

野江の言葉に偽りは無いだろう。彼女が持つ赤が揺るがないからだ。これまでクロウは赤丸や義藤に着目していた。もちろん、野江や都南が優れた人物であることを知っている。間近で見て分かる。野江と都南の才能が。クロウは紅のことを何度恵まれていると思えば良いのだろうか。色神は一人では立てない。支えてくれる仲間が必要なのだ。

 殺伐とした雰囲気。いや、殺気だった空気。

「野江、そう尖るな。信じてくれ、菊」

柴が鞍に伏せたまま口にした。その言葉は温かい。柴という人の人柄が表されている。温かく、大きい。それが柴だ。そして、柴は続けた。

「野江、紅からの連絡には何とあった?」

柴が穏やかな、大きく広がりのある声で言い、野江は言った。

「悠真のことは心配するな、と言っていたわ。悠真と一緒にいる赤影と連絡が取れたと」

その言葉にクロウも安堵した。悠真も無事なのだ。悠真と一緒にいる赤影と連絡が取れたということは、赤丸、赤星も無事なのだ。赤影が二人いるとは限らない。もしかしたら、二人のうちのどちらかは命を落としているのかもしれないが、クロウは信じていた。優れた才能を持った赤丸も、奇妙な存在である赤星も、どちらも無事であると信じていた。赤菊は赤影だ。赤丸と赤星が無事であるということに、安堵したに違いない。柴はゆっくりと言った。

「状況は混乱している。この通り、俺は役に立たない。菊が頼りだ。少しの間、力を貸してくれ」

野江と都南も歩きながら、振り返り、赤菊を見ていた。二人は赤菊の動作に注目していた。赤菊は歩きながら、俯き、そして言った。

「左に曲がってください。小屋があります」

赤菊が言い、都南の前に出た。

「こっちに来てください」

赤菊が皆を先導した。


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