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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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迷える黒(5)

 クロウは小さな身体で野江と都南を見上げた。このような仲間が欲しい。火の国に足を運んでから、何度このように思っただろうか。何度、仲間を求めただろうか。

 都南が雨に濡れる三人を見て呟いた。

「紅の言うとおり、柴と二人の女性がいるな。とりあえず、紅城へ運ぶとするか。野江、手を貸してくれ」

都南は柴の腕の下に手を入れようとした。クロウの間近に都南がいる。クロウは赤の術士と接触する。接触しなくてはならない。この状況を打開し、己の命を繋ぐために、紅の命と火の国を守るために。


 クロウは一つ息を吸い込み、戦場を思い出した。宵の国の小国の間の戦乱。クロウは何度も死線を潜り抜けてきた。生きるために、戦ったのだ。今もそうだ。これは戦いだ。


――さあ、動け。


クロウは都南を見上げた。


「都南」


クロウは都南を呼んだ。都南は不思議そうに辺りを見渡した。

「都南、どうしたの?」

野江が不思議そうに都南に尋ね、都南は更に首をかしげた。

「いや、誰かが俺を……」

都南が呟いた。彼らは未だにクロウの存在に気づいていない。紅から小さき異形の者の監視についての警告がなされ、一度は消えた小さき異形の者。彼らは油断している。平和な火の国らしい。クロウは笑みを堪えて、呼んだ。


「野江」


次は野江を呼んだ。

 野江も不思議そうに辺りを見渡していた。クロウは柴の着物の下から這い出した。


――小さき異形の者


それがクロウの今の姿だ。その姿は、赤の術士たちの敵だ。


 野江と都南は同時に後ろへ引き下がり、野江は紅の石を、都南は刀を抜いた。素早い反応だ。この平和な火の国でありながら、戦いに慣れている。油断している状況から、瞬時に身を引き締める。切り替えの早さは一流だ。

 

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