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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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迷える黒(4)

 迫り来る足音。小さき異形の者の身体になったクロウには、馬の蹄の振動が地震のように感じられた。


――案ずるな。


クロウは己に言い聞かせた。

 馬は目の前に迫っていた。


 クロウの想像通り、野江と都南が駆けつけた。見て分かること、それは二人が優れた術士であるということだ。先を走っているのは都南だ。彼は手綱を操り馬を止めると、馬から飛び降りて倒れる三人に駆け寄った。

「柴!」

都南が駆け寄ったのは、クロウが近くにいる術士の男。

(なるほど、これが柴か)


――柴。


クロウは術士の男を見て納得した。正規の術士。都南が身を案じる立場の者なのだ。強いのは当然だ。

「都南、柴は?」

野江も馬から降りて、倒れる三人に駆け寄った。

「大丈夫だ。多分」

都南は言い、一つ息を吐いた。野江は倒れる二人に目を向けた。

「こっちの二人は……」

野江は倒れる二人の呼吸を確認し、一つ息を吐いた。無事であることに安堵したようだ。無事に決まっている。薬師を攻撃したのは赤丸であり、赤菊を攻撃したのは悠真だ。仲間だから、傷が残るようなことをするはずがない。それにしても、とクロウは野江と都南を見た。二人とも異質な容姿をした薬師に動揺しない。まるで、当然であるかのように受け入れている。頭で理解していても、己と異なる者を「当たり前」と受け入れるのは難しい。二人の懐の深さがうかがえる。ここまで、他者を受け入れることが出来る者はあまりいない。クロウは宵の国でそのような人物を思い浮かべることが出来なかった。


――火の国は、何とも温かい。


クロウは火の国の温かさに心打たれ、火の国にある「和」を知った。異なる者を否定する慣習もある。けれども、受け入れて前に進むことが出来る。


――火の国に生きる人は、前に進む力がある。


クロウは心が満たされる思いがした。喰うとか、喰われるとか、そんなことは無意味だ。もちろん、火の国にも問題はある。色神が只の人間に殺されるなど、言語道断だ。だが、他者を受け入れる術士がここにいる。彼らのような人が増えれば、火の国は良い方向に進む。

男勝りの紅と共に。

優しき紅と共に。

美しき紅と共に。

強き紅と共に。



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