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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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迷える黒(2)

 クロウは宵の国を思い描いた。戦乱の宵の国。戦いが嫌いで、必死になって戦った。戦いに終止符を打つためには、戦うしかないと己に言い聞かせて、戦って、戦って、戦った。幾人もの命を奪い、戦い続けた。クロウが殺した命はクロウを決して許さないだろう。


 これは業だ。罪だ。クロウが殺した命がクロウへ復讐をしているのだ。


 ヴァネッサが待っている。


 クロウは生きて戻らなくては鳴らない。宵の国はこれからなのだ。ようやく長い戦乱の時代が終わり、ようやく平和な時代が訪れたのだ。これから、始まるのだ。これから、平穏な時代が始まり、これまでの戦乱を過去のものに変えるのだ。戦うことが如何に虚しいことか、戦うことがどれほど無意味なことか、教えられるのだ。黒は残酷な色でなくなる。全てはこれからなのだ。その答えを探すために火の国に来たというのに……。


 まだ、諦めることは出来ない。


クロウは己に言い聞かせた。


 落ち着け。

 落ち着け。

 考えるんだ。

 考えるんだ。


 クロウは思考をめぐらせた。そして、大きく息を吸い込んだ。


「ここで終わることは出来ない」


一つ呟くと、クロウは足を進めた。小さき異形の者の、小さき足で、草を掻き分け森の中へと足を進めた。


 冷たい雨の中、クロウは先へ進んだ。森の奥に逃げた術士がいるはずだ。逃げた術士を助けに、赤の仲間たちが来るはずだ。ちょうど、野江や都南がこちらへ着くころのはずだ。戦う術を失ったクロウは、彼らに助けを求めるしか出来ない。生きるため、紅の命を守るため。火の国と宵の国の未来を作り出すため。


 小さき異形の者の身体は動くに不便だった。十分な力がないからだろう。主であるクロウが十分な力を与えてやれないからだろう。動きは緩慢で、自由が利かない。足を踏み出すたびに、意識が途切れそうになり、そのたびに己を奮い立たせた。



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