藤色の守護者(24)
源三は木箱を出すと、紅に見えるように開いた。正座をし、身を正した老人は、年老いているという侮りを寄せ付けなかった。
「お返しします。術士で無い者が持つのは罪。その罪は謹んでお受けしましょう」
源三は深く頭を下げた
木箱の中には沢山の色の石が入れられていた。
「源三様!」
戸惑ったように可那が身を乗り出した。
「彼らは雇われ護衛。そのような……」
可那の制止を、源三はゆっくりと止めた。
「なぜ、このようなところにおられるのですか?紅様」
源三は一つ尋ねると、紅に深く頭を下げた。
なぜ、紅だと知られてしまったのか。義藤は分からず、戸惑った。紅は紅であることを知られてはいけない。一言も、明かすようなことを言っていない。なのに、どうして……。戸惑う義藤をよそに、紅はそっと膝を折り、源三に視線の高さを合わせた。
「会ったことがあるからです。紅様と。いえ、あなたではありません。先代の紅様とです。一度だけ、本当に一度だけ密かに紅城に招かれたことがありまして、そこでお会いしました」
紅は苦笑した。
「紅が官吏を紅城にね。紅城に紅が使う抜け道を作った先代は、それなりに行動力のある人だとは思っていたが――先代がそこまでするとは思わなかったな。遠爺や惣爺に怒られただろうに。それでも、そんな逸話は聞かなかったな」
源三は頭を下げていった。
「内密に、招かれましたので。赤丸という名の、女性に連れてこられたと表現したほうが正しいでしょう」
紅はさらに問い詰めた。
「それでも、私が紅であるということに分かるはずがない。人に紅を見分ける術などないのだから」
すると、源三は懐から色を失った石を取り出した。
「先代の紅から受け取りました。一度だけ、紅を見分けることが出来る石を。言葉と共に」
源三は口を開いた。その言葉は源三の言葉でなく、先代の紅の言葉だ。