藤色の守護者(14)
どうやら、紅は野江の怒りを鎮めるために義藤を差し出すつもりなのだ。まったく、勘弁して欲しいものだ。
「こっちのことは安心しろ。二人に頼みたいことがあるんだ。そのまま、川沿いに行け。柴と二人の女性が倒れているはずだ。問題ないと思うが、柴たちをそのままにしておけないだろ。後の二人のこと?――信じろ。仲間だ。柴を助けてくれた者たちだ。異形の者がもう一度、襲ったのさ。悠真なら心配するな。悠真と一緒にいる赤影と連絡が取れた。官府にいる。大丈夫だ。悠真にも動いてもらう。私は私で義藤と秋幸と共に動く。佐久や遠爺にも仕事を振っておくから。柴たちを保護したら、また連絡してくれ」
紅は言うと、一つ溜め息をついた。そして再び紫の石を取り出すと、話し始めた。
「佐久、今何をしている?そうか、紅城の中か……。ならば、紅城の周囲を警戒しておいてくれ。黒の色神の暴走を感じて、他の色がどう動くか分からない。気づいているんだろ。流の国の術士と白の色神も火の国の内部に入り込んでいる。流の国は疑いだが、白の色神は確かなことだ。火の国の中に僅かにある白が揺らぎ、動いたからな。白の色神の力に反応したんだろ。こちらのことは気にするな。佐久は佐久の仕事を頼む」
そして紅は更に紫の石を使った。紅城の重鎮「遠次」にも紅城の警戒を依頼したのだ。そして最後には赤影に紫の石を繋げた。
「赤山、いるんだろ。赤星のところへ行ってくれ。赤丸のところでも良い。私たちは大丈夫だ」
それは、赤影への命令だ。義藤には分からないが、そこに赤影の一人がいるのだ。紅は一つ、溜め息をついた。
「相変わらず、頭が固いな。今、私よりも赤星や赤丸の方が危険な状態だろ。私は、赤影を使い捨てのように思わない。先々代の紅の罪は私の罪でもある。赤山、私を信じてくれ。赤菊は大丈夫だ。野江と都南が迎えに行ったから。私は、赤丸も赤星も死なせるつもりはない。もちろん、お前もだ。赤山」
すると、しばらくの間紅は黙した。もしかすると、赤山から何かの返答があったのかもしれない。
「まったく、年の功には敵わないな」
紅は苦笑した。