藤色の守護者(13)
紅は目を細め、そっと紫の石を繋げて作られた数珠に目を向けた。
「赤丸?いや、その声は赤星だな」
紅に誰かの声が届いているようだ。部外者である義藤には、紅の声しか聞こえない。赤丸、ということは、紫の石の先にいるのか赤丸だろう。赤丸を思うと、義藤の心臓が一度強く脈打った。
「驚いたぞ。それは赤丸の石のはずだ。なぜ赤星が持っている?」
紅は言った。相手の声は、義藤には聞こえない。聞こえるのは、紅の声だけだ。どうやら、義藤の心配は無駄足だったらしい。相手は赤丸でなく赤星。赤星という名からして、赤影の一人だろう。しかし、気になるのは赤星という赤影の一員が赤丸の石を使っていることだ。単純に赤星が紫の石を失い、赤丸の石を使っているだけなのか、赤丸が動けない状態に陥り赤星が代理で連絡を取っているのか……。赤丸が敗れることがあるはずがない。義藤は己に言い聞かせた。おそらく前者だ。赤丸は優れた存在だ。表の世界で生きれば、それこそ術の力で野江に並び、剣術で都南に並ぶ存在だ。全ては推測に過ぎない。義藤には場を乱してまで赤丸のことを紅に尋ねる度量はないのだから。
紅と赤星の会話は続く。
「こっちなら心配するな。義藤と秋幸と一緒だ。異形の者と戦ったんだがな、異形の者の暴走で黒の色神の力を食い尽くしそうだったからそれ以上何も出来なかった。怒るなよ。黒の色神を死なせることは出来ないだろ」
紅はそこまで話すと、そうだな、と頷き相槌を打っていた。しばらく紅と赤星は話した後、紅は義藤と秋幸を見た。その表情は強さを持っている。凛とした声で紅が話し、赤い声が辺りを満たした。
「義藤、秋幸。安心しろ。ここには私たち以外の仲間がいる。赤影の一員と悠真がいる。黒の色神の身体を二人が捜す。私たちは、私たちのすべきことをしよう」
紅の発言に秋幸が尋ねた。
「俺たちは一体、何をするんですか?」
秋幸の問いに紅は笑った。
「ゆっくりと、異形の者に近づく。異形の者は官府の頂点にいるだろ。気づかれないように、ゆっくりと、ゆっくりと動く。途中で、私たちの仲間となる官吏が見つかれば、なお良いだろ。野江と都南には外のことを任せる」
言うと紅は少し離れたとこで紫の石に呼びかけ始めた。これは、義藤らが変わることが出来ない仕事だ。的確は判断と、手早い指示で仲間を動かす。紅の的確な指示があるから、義藤らは紅を信じて、団結することが出来るのだ。紫の石を同時に使う紅の荒業だ。
「野江、都南。聞こえるか?今、どこにいる?――ああ、怒るな。怒るなって。勝手に動いたことなら、後で謝るから。野江、黙ってろって。ああ、もう。都南、何とかしてくれ。分かった、それなら後で義藤が話を聞くから」
紅の恐ろしい発言に、義藤は思わず息を呑んだ。