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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
244/785

藤色の守護者(7)

紅はゆっくりと義藤と秋幸を見比べた。そして、強く言った。

「間もなく、ここは戦場になる。赤丸は異形の者に負けた。悠真の力で何とか収束したような、してないような状況だ。異形の者は暴走したまま、赤丸と悠真と赤影の一員である赤星を連れてこちらへ向かっている。間もなく着くだろう。異形の者は黒の色神の支配下を抜けている。止めるには、もう一度黒の色神に頑張ってもらわなくてはならない。それまでは、私たちで持ちこたえる」

紅が強く言い放った直後、大きな悲鳴が聞こえた。官府の建物の端々から上がる悲鳴。その悲鳴の中で、紅は言った。

「始まった。異形の者が戻ってきたんだ。義藤、秋幸。官吏の非難を促すぞ。異形の者が火の国の民の命を喰わないように、出来る限り押えるぞ」

紅の言葉に義藤は頷いた。


 それから、官府は悲鳴に包まれた。巨大な異形の者が暴れる姿。逃げる官吏。破壊される官府の建物。

「これは、修理費を宵の国に持ってもらわなきゃな」

紅が一言文句を口にし、そのまま駆け出した。階段を駆け下り、悲鳴の聞こえる方向へ駆け抜けた。その後を義藤は追った。そして秋幸も走った。不思議な恐怖がそこにあった。異形の者が火の国で暴れることの恐怖。赤が黒に喰われる恐怖。何より義藤が恐れたのが、紅が黒に殺されることだ。紅には生きていて欲しい。紅に傷ついて欲しくない。その思いは本物だ。すぐに、異形の者の姿が見えた。


 間近で見たのは、巨大で膨れ上がった異形の者の姿だった。異形の者は醜悪な姿でこちらを睨んでいる。

「赤丸たちがいないな……」

紅は言った。赤丸の姿が見えないことに対して、紅は不安を覚えているようで、少し嫉妬を覚えながら義藤は言った。

「今、俺たちがするべきことは、あの異形の者がこれ以上暴れないようにするだけだ」

義藤は刀を抜いた。しかし、紅の石を持っていない事実は変わらない。紅の石が無い今、どれほどの力が己にあるのだろうか。不安はぬぐいきれない。それでも、義藤は戦うしかない。戦うしか出来ない。義藤は秋幸に言った。

「秋幸、俺は紅の石を持っていない。あまり役立たないかもしれない。力になってくれるな?」

秋幸は頷いた。異形の者はこちらを睨んでいる。義藤は秋幸の力を信じている。幼い頃しか知らないが、その力は本物だ。

「言っておくが、紅は色神だ。あまり最前線に出ないでくれよ」

義藤は紅に言って、羽織を脱ぎ捨てた。髪飾りを外すと、懐に入れて、紙を紐で束ねた。これで、義藤は義藤に戻った。藤丸の姿は消え去ったのだ。

 先に駆け出したのは、義藤と秋幸が先だった。義藤が刀を振り上げて異形の者に飛びかかった直後、秋幸と紅が同時に紅の石の力を発し、義藤の前に赤い盾が出現した。赤い盾は異形の者を押さえつけ、義藤は刀を振り下ろした。振り下ろした刀は異形の者を切り裂き、異形の者は僅かに身体を傾けた。その隙に秋幸が青の石の力を発し、複数の水人形が異形の者の足にしがみついた。秋幸と共に戦うのは、義藤にとって初めての経験だった。それは、都南や野江、佐久と戦う時とまったく違う。新鮮で、動きが合わない。なのに、戦いにくさはない。補佐するのでなく、補佐されるのは戦い方が異なるのだと実感させられる。異形の者は爪を振るい、水人形は崩れた。しかし、実態のない水だ。再び形を作り、水人形となる。同時に使われたのは、黄の石。床から岩が浮き上がり、異形の者の足を捕らえる。それは、一時のことであっても、義藤にとって十分な隙だ。異形の者は足を振りぬいたが、直後義藤は刀を振り抜き、異形の者の首を斬りおとした。斬りおとした首を、紅が紅の石の力で押さえつけた。


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