赤と異形の者と官府(14)
赤星は口には石がつなげられた紐をくわえていた。
「赤丸の石さ。紅の石は加工されているから、俺は使うことが出来ないが、他の石なら使える。今の状況で、この中で最も重要なのはこの紫の石さ」
赤星は地に紐でつなげられた様々な色の石を置くと、紫の石に鼻を近づけた。
「紅、紅、紅」
赤星は紫の石に呼びかけていた。紫の石は人を繋げる石だ。そう、説明されたことを、悠真は思い出した。
「ああ、分かっている。俺の石が近くに無いのさ。赤丸なら心配するな。ちょっと、ややこしいことになっているのはお前も気づいているだろう。異形の者は黒の支配下を抜けている。そうだ。そう。悠真もここにいる。柴なら赤菊が連れている。心配なら、誰か迎えにやってくれ。赤菊が柴を抱えて動くのは無理だろ。俺もここにいることだしな。薬師も無事だ。それで、そっちの状況はどうなっているんだ?」
赤星は頷いていた。もしかすると、紅の声が赤星に届いているのかもしれない。
「俺たちは俺たちで動いていみる。ここからなら、黒の色神の体も近いはずだ。お前が動くと、異形の者に勘付かれるぞ。野江や都南も動かせ。まず、菊の迎えからだな。異形の者はここに陣取っている。官府に進入するのは容易くないだろうな。お前は誰と一緒なんだ?ああ、義藤と秋幸か。義藤が一緒なら……と言いたいが、あいつは紅の石を持っていないだろ。双子とは言え、赤丸の石は使えないんだから。とにかく、危険なことに首を突っ込むな。それは分かっているんだろ。分かった。分かっているって行っているだろ。ああ、俺たちで黒の色神を探す。お前たちが異形の者をひきつけておく。野江と都南が菊を迎えにいってから、ここへの進入を試みる。それで良いんだろ。とにかく、義藤と秋幸から離れるな。赤丸ほどではないが、義藤も術士としては一流だからな」
赤星は続けた。
「赤丸は残していく。俺と小猿じゃ運べないからな。赤丸の石は俺が貰っておく。何かあれば、俺に連絡しろ。何、俺のことは心配するな。またな」
赤星は言うと、ゆっくりと前足を起こした。腰を浮かせると、立ち上がり悠真を突いた。
「ほら、行くぞ」
赤星は言った。傷だらけで、胴体に巻かれた包帯には血が滲んでいる。それでも平然としているのだ。どうやら、赤影たちは痛覚が鈍麻しているらしい。そう思えるほどだ。
悠真はゆっくりと身体を起こした。関節の節々が痛み、体が石のように重たかった。
「とりあえず、黒の色神を探すぞ」
赤星はゆっくりと足を進めた。