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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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赤と異形の者と官府(10)

赤は黒を呼び続けていた。


――宵の国を統一したという実力者も、蓋を開ければこの程度のものじゃ。このざまで火の国を喰うなど、永遠に出来ぬな。


赤は高貴に、高圧的に笑った。雨の冷たささえも、赤が吹き飛ばしてしまいそうなほどだった。


――いい加減にせぬか?まだ、分からぬのか?このまま続けて、何になると言うのじゃ?最早、主の声は届かぬぞ。


赤は静かな口調で言った。


――主が身体にすがり泣こうとも、心はここにおる。ここで、止めねば永遠に心は戻らぬぞ。


赤の赤い目がまっすぐに異形の者を見ていた。


――のお、黒。一度、姿を見せぬか?


異形の者の後ろに、黒がいる限り、この異形の者は強い。黒は赤を喰おうとするのだ。悠真の視界が一瞬かすんだ。赤の力は強大で、悠真のすべての力を吸い取っているような気がした。


 姿を見せたのは、下村登一の乱の時に姿を見せた少女だ。二つ結びの黒い髪に黒い目。黒い服に、気の強そうな顔立ち。それが黒だ。その黒が、何とも哀しそうに俯いているのだ。

 黒と赤は言い争っていた。どうやら、黒の色神の力が暴走しているらしい。


黒、無色に頼れ。そもそも、他人が使った色の力を収束させることが出来るのは、その色の色神としての力を与えられた者だけじゃ。暴走したクロウの力を収束させることが出来るのは、黒の色神であるクロウのみ。そのクロウが出来ぬのじゃ。ならば、無色に頼るしかあらぬ。無色は、染まった色の色神と等しい力を持つ。今はわらわの色に染まっておるから、紅と同じ力を持つ。黒、分かるであろう?暴走した黒の色の力を収束させるには、無色を黒に染めるしかあらぬ。


 悠真は赤と黒を見比べた。赤と黒の二人を揃ってみたのは、下村登一の乱の時だ。あの時のように、悠真は異形の者の力を収束させなくてはならないのだ。


――大丈夫よ。悠真。あなたしかいないの。暴走した黒の色神を抑えることが出来るのは、広い世界を探しても、無色の私が選んだあなただけ。だから、自信を持ちなさい。これは、紅にも、赤丸にも成せないことなのおだから。このまま逃げれば、あの異形に火の国は喰われるわ。黒の色神が力尽きたり、本体の体が死ぬまで暴走は止まらないの。でも、容易く殺すことは出来ないわ。だって、色神だもの。だから悠真。あなたしかいないの。遥か昔のように、色の世界の混乱が、人間の世界に影響が出ることは許されないの。


無色の声が柔らかく悠真の心に響いた。優しく、温かく、そして透き通った無色が色を持つ。

 悠真の体に黒が満ち始めた。火の国で生きる悠真にとって、悠真は体に黒が満ちることに不安を覚えた。


――大丈夫。


無色の声が悠真の心の中で響き、悠真は黒に染まった。



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