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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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赤と異形の者と官府(2)

 赤は、なぜ今更悠真の前に姿を現したのか。何度も危機はあった。団子屋で、異形の者に襲撃されたとき、空から川へ落ちたとき、悠真は何度も命の危機を覚えた。なのに、赤は姿を見せなかった。悠真は赤の力を使うことも出来ず、赤に相談することも出来ず、ただただ途方にくれていた。

 悠真は赤丸の背中を見た。そして、赤い夜の戦いの折、義藤を救うために叫んだ赤を思い出した。赤は、赤丸を救おうとしているのだ。


 異形の者は赤丸を狙った。


 赤丸は異形の者と戦った。悠真はそれを見ることしか出来なかった。



――ぐぉぉぉ


低いうなり声が響き、悠真は振り返った。すると、そこには巨大な熊がいた。これほど大きな熊が、都の近くにいるとは思えなかった。人を喰うほどの大きさだ。なのに、不思議と熊に対して悠真は恐怖を覚えなかった。熊から、独特の色を感じたからだ。


 悠真は赤丸の背中を見ていた。赤丸は怖気づくことなく、真っ直ぐに異形の者に向かっていた。振り返ると、赤菊が熊のせ中に薬師を乗せ、次は犬を乗せようと引きずっていた。悠真は、どうすれば良いのか分からなかった。


――赤丸は死なぬ。無色の奴が、小猿を使うなと五月蝿くての。小猿がわらわの色に染まりすぎるのを気にしておるのじゃろ。赤丸は死なぬ。赤丸は死なぬ。


赤は繰り返し言った。


――赤丸は死なぬ。赤丸の強さは、わらわが最も知っておる。その才能は、世界に出しても恥じぬ。


赤は赤丸のことを心から信頼しているようであった。だから、救うために叫んだりもsない。悠真は赤の行動の真意が理解できなかった。


 悠真は雨に濡れながら、ただ赤丸と異形の者を見ていた。本当ならば、赤菊の手助けをしなくてはならないのだろうが、悠真は動けなかった。足が岩のように凍りつき、一歩も踏み出せないのだ。


――怯えるな、小猿。赤丸がいる限り、何も案ずる必要はあらぬ。


赤は言った。赤丸を信じろと。だが、悠真は動けなかった。悠真の目には、膨れ上がる黒い色が見えたのだ。異形の者は見る見る膨張し、濃度を増していく。悠真は、赤の言葉も虚勢のようにしか聞こえなかった。この黒に敵う者がいるのだろうか。そう思うほどだ。


――赤丸は、特別な存在じゃ。義藤は愛しい存在。赤丸は、特別な存在。その才能は野江にも、都南にも、佐久にも負けぬ。


赤は言い放った。まるで、赤丸が異形の者に負けないと信じているようだった。


――赤丸が負けるのなら、紅でさえ勝てぬ。本気の赤丸が負けるということは、紅も勝てぬ敵ということじゃ。だから、わらわは信じねばならぬ。赤丸は負けぬ。そうじゃろ、赤丸。


赤は赤丸に言った。赤は色だ。色の神だ。だから、その声が赤丸に届くはずも無い。しかし、赤は赤丸に語りかけたのだ。


――わらわは、赤丸を信じて良いのじゃろ?


赤は赤丸に声が届いていると信じているようだった。

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