表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
222/785

黒の監視(24)

 クロウは闇の中にいた。一体、何が生じたというのか。一体、何がクロウを襲ったというのか。クロウは理解できず、そして闇の中でもがいた。この闇はイザベラなのか、色の世界なのか、クロウには理解できない。ただ、黒い色の中にいたのだ。

 クロウは黒を恐れない。なぜなら、クロウは黒の色神だから。しかし、闇を恐れるのは人間としての本能だ。


(何が起こった?)


クロウは言った。声は声にならない。そこは、官府でなく、イザベラの身体でもない。まるで、イザベラと自らの体の挟間に堕ちてしまったようだった。


(何が起こった?)


クロウは自らに問うた。そうしなければ、冷静さを欠いてしまいそうだった。もし、悠真が力尽きてしまったら、クロウはどうなるのだろうか。もう一度、ヴァネッサに会うことは出来るのだろうか。黒に会うことは出来るのだろうか。

 クロウはもがいた。手をばたつかせ、暴れた。しかし、手はそこにない。クロウの身体はそこにない。クロウは身体に戻ることが出来なかったのだ。思考だけ切り離されて、闇の挟間に陥ったのだ。


(こんなところで終われない)


クロウはもがいた。


(こんなところで終われない)


クロウは暴れた。


(こんなところで終われない)


宵の国は統一されたが、未だ不安定だ。今、クロウが倒れてしまえば、再び戦乱に陥るだろう。ヴァネッサが悲しむ。黒が悲しむ。多くの命が奪われるのだ。そして、黒は死の色というイメージが定着してしまう。


(こんなところで終われない!)


クロウはもがいた。それは執念だ。ここで終われないという執念だ。クロウはまだ、消えるわけにはいかない。宵の国で生きる人のためにクロウは終われない。平和のために、終われない。火の国のような平和な国に宵の国がなるまで、クロウは終わることが出来ない。


 クロウの執念は闇を動かした。赤丸に対し抱いた強い感情が、クロウの力を暴走させイザベラと一体化させたように、クロウの執念が闇を動かしたのだ。


 光が差し込み、クロウは無い手を伸ばした。身体を伸ばした。そして、気がづけば瓦礫の下いた。


だが……


 クロウの身体はそこに無かった。クロウは、十センチほどの大きさの、小さき異形の者になっていたのだ。身体に戻ろうとしたが、戻れない。悠真の力がなければ、戻れないのかもしれない。


 クロウが瓦礫の下から顔をのぞかせると、そこにはイザベラの姿があった。


 変だった。


 クロウが切り離されたのに、イザベラはそこに立っている。力尽きて倒れる悠真。クロウは何の指示も出していない。けれども、イザベラは動いていた。クロウから切り離され、クロウの指示もなく、イザベラは動いていた。


 イザベラは、誰にも制御できない異形の者になったのだ。


 イザベラは大きく爪を振るい、赤や黒は掻き消えた。雨の中、堂々と立つイザベラはクロウでさえ恐怖を覚えた。これが、本物の恐怖。



これが、枷を外された強大な力。


クロウはイザベラが火の国を滅ぼす様子を想像した。その想像は、間もなく現実となるだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ