表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
220/785

黒の監視(22)

 無色の小猿「悠真」は今、赤に染まっている。それを、黒に染め直すことで、クロウをイザベラから引き離そうとしているのだ。


――そんなこと、無色がすると思うの?それは、赤だから無色も力を貸すんでしょ。赤は、あの時、無色を庇ったから。


黒は首を横に振っていた。


――自分で頼め。無色にな。


赤が言い、黒は俯いた。両手でバルーンスカートを握り締め、黒いブーツで地面を踏みしめ、しばらく黙した後に強く言い放った。


――無色、助けてちょうだい!あたしのクロウを、助けてちょうだい!


黒の目は地面を見たままだ。気位の高い黒が、色の世界の覇権を握ろうとしている黒が、覇権を握るために無色を狙っていた黒が、無色に助けを求めたのだ。もしかしたら、この一言で、黒は色の世界の覇権を目指すレースから脱落してしまったのかもしれない。クロウが、黒の足を引っ張ったのかもしれない。負けじと、クロウは言い放った。


――頼るからって、あたしは無色を諦めたわけじゃないから。色の世界で、黒を醜い色にしたりしない。死の色にしたりしない。それが、あたしの願いなんだから。宵の国は統一された。きっと、黒が死の色なんてイメージ、消えるんだから。


クロウは跳ねるボールのように、弾む声で言い放った。すると、澄んだ声が響いた。


――そうでなくちゃ、黒らしくないわ。でも、私は染まったりしない。無色は無色であるからこそ、美しくあり続けられるの。色の世界の絶妙な世界のバランスを崩したりしない。でもね、私はあなたに力を貸すわ。悠真が、それを望んでいるから。


それが無色の声なのだと、理解することは出来る。冷たい川の水のような、燃え上がる炎のような、吹き抜ける風のような、広大な大地のような、荒れ狂う海のような、吼える獣のような、固い金属のような、何とも表現の難しい色。全ての色の要素を持つ。それが無色なのだ。


――あたしは、無色を諦めたりしてないから!


黒は泣きながら叫んだ。目に大粒の涙を浮かべながら、それでも気の強さは変わらない。


――分かっているわ。だから、今は諦めて、また私を狙いにいなさい。それで良いでしょう?もう、私は逃げたりしないわ。悠真とともにあり続ける。


無色の声が柔らかく諭した。黒は泣きながら、悠真に近づいた。そして、悠真の肩に手を乗せた。


――クロウを、助けてちょうだい。あたしのせいなの。あたしがクロウに甘えすぎたの。


黒がそんな言葉を発することが、クロウには信じられなかった。気位の高い黒らしくない。それほど、クロウが黒を追い詰めてしまったのだ。


「黒」


クロウは言った。その声は、イザベラのギュルルルという泣き声にでしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ