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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の監視(21)

 クロウはイザベラと別れることが出来なくなっていた。暴走した力の収束方法が見つからないのだ。


――クロウ。


黒がクロウの名を呼び、クロウの前足に触れた。黒の哀しそうな表情がクロウの胸を苦しめた。

(黒、すまない)

クロウは言った。だが、声にならなかった。発せられるのは、イザベラのギュルルルという鳴き声だけだ。すると、赤が口を開いた。


――黒、主のクロウを救う手立てがあるぞ。


赤の声は、赤く力を放つ。まるで、赤にすがるように黒は赤を見上げていた。クロウはそれが辛かった。気位の高い黒が、他色に頼るなど、どれほど辛いことだろうか。黒の胸の痛みを思うと、クロウは言葉で表現できない気持ちになるのだ。


――どうするの?


黒は容易く赤に頼った。それが可笑しいのか、赤は笑った。口元を優雅に赤い扇子で隠し、切れ長の赤い目を細めて、何とも優美な表情をして笑ったのだ。


――主が容易くわらわに頼るとは、それほどまでに、この男のことを思うておるとは、何とも不思議なことじゃの。いつも、人間に入れ込みすぎると、わらわを笑う主がのぉ。


赤の言葉に黒は頬を膨らませた。


――放っておいてよ。あんたに、あたしの気持ちなんて分かりっこないんだから。


子供のように振舞う黒に、大人のように落ち着いている赤。いつの間にか、赤の高圧的な雰囲気は消えていた。赤は慈しみに満ちている。


――分かるぞ。主が、このクロウを思うように、わらわは紅を思う。義藤を思う。赤丸を思う。赤の術士を思う。今の紅は、何とも仲間に恵まれた者でのぉ。我が色を輝かせるに、十分な力を持つ者じゃ。それは、主がクロウを思うのと同じじゃろ?これまで、主はあまり人間に興味を抱かなかった。わらわは何度も、何度も、人間に入れ込んだ。その違いしかあらぬ。


赤は何とも愛しそうに、紅の話をするのだ。黒は目にうっすらと涙を浮かべながら、それでも気の強さを失うことなく言った。口調は強く、まるで子供が必死に自らの正当性を伝えようとしているようであった。


――あたしは、あたしは赤のようにならないんだから。自らが選んだ器に入れ込みすぎて、色の世界での権力を失い、小さな島国に追いやられるなんて……。あたしは、そんな風にならないんだから!ただ、ただ、ただ、クロウが大切なだけなんだから!


今にも赤に飛び掛りそうな勢いだった。支離滅裂な黒の発言に、赤は優美に微笑んだ。


――主がそう言うのなら、それでも良い。わらわは、そんな主のこと、嫌いでないぞ。


そして、赤はゆっくりと続けた。


――黒、無色に頼れ。そもそも、他人が使った色の力を収束させることが出来るのは、その色の色神としての力を与えられた者だけじゃ。暴走したクロウの力を収束させることが出来るのは、黒の色神であるクロウのみ。そのクロウが出来ぬのじゃ。ならば、無色に頼るしかあらぬ。無色は、染まった色の色神と等しい力を持つ。今はわらわの色に染まっておるから、紅と同じ力を持つ。黒、分かるであろう?暴走した黒の色の力を収束させるには、無色を黒に染めるしかあらぬ。


赤は戸惑いながら立ち尽くす、無色の小猿「悠真」を振り返った。

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