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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の監視(19)

 クロウは更に力を高めた。クロウはイザベラと一体になったのでなく、クロウがイザベラになったように感じた。いや、もともとクロウはイザベラだったのかもしれない。クロウの意識は少しずつ、朦朧とし始めた。


 赤丸が作り出した最後の盾は砕け、赤丸の身体はクロウの爪に捕まり空に投げ飛ばされた。同時に、クロウは悠真を狙った。


だが……


 突如、クロウの身体が動かなくなった。見ると、悠真の横に赤がいるのだ。それは、本物の赤だ。クロウが初めて見た赤だ。

 着物は火の国の着物と似ている。赤い着物に、結い上げられた髪。赤い目に、赤い唇。高圧的な雰囲気が印象的だった。その赤が、悠真の横に立っているのだ。すると、悠真が持つ紅の石が、本来の力以上の力を発揮しているのだ。赤が悠真に力を与えている。同時に、無色が赤を受け入れているのだ。


――皮肉なことじゃのぅ。


優雅な声が響いた。赤い唇がゆっくりと動き、赤い声を発する。


――わらわは赤丸を死なせたりせぬ。それは、義藤を死なせぬのと同じじゃ。二人して、小猿のために命を捧げようとするのじゃから、わらわの苦悩は尽きぬ。


この場にそぐわない、高貴で優雅な雰囲気が赤から漂っていた。赤い扇子を開き、ヒラヒラと風を起こすその様子、雨に濡れない赤の姿は何よりも高貴に思えた。


――のう、黒。


赤はゆっくりといった。


――のう、黒。聞いておるのか?そこにおるのか?


赤は言った。何を言っているのだ?黒の色神はここにいる。クロウはここにいる。赤は誰を呼んでいるというのか?クロウは身体を動かそうともがいた。しかし、クロウの力よりも、赤に染まった無色の方が強い。だから、クロウは動けない。


(そこをどけ!)


突如現れた大きな力に邪魔をされ、クロウの心は乱れた。大きく叫んだが、その声は声にならない。声が出ないのだ。発せられたのは、ギュルルルという鳴き声だけだ。


――宵の国を統一したという実力者も、蓋を開ければこの程度のものじゃ。このざまで火の国を喰うなど、永遠に出来ぬな。


赤は高貴に、高圧的に笑った。まるで、クロウを嘲笑っているようであった。


――いい加減にせぬか?まだ、分からぬのか?このまま続けて、何になると言うのじゃ?最早、主の声は届かぬぞ。


赤は静かな口調で言った。


――主が身体にすがり泣こうとも、心はここにおる。ここで、止めねば永遠に心は戻らぬぞ。


赤の赤い目がまっすぐにクロウを見ていた。


――のお、黒。一度、姿を見せぬか?


まるで、駄々子を静めるように、赤は優しく語りかけていた。その目は優しく慈しみに満ちている。赤は強く残酷な色なのに、これほどまでの優しさと温かさを持っている。分からない色だ。

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