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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の監視(18)

 クロウが赤丸に止めを刺そうとしたとき、クロウの前に突然無色の小猿が姿を見せた。


「悠真……」


赤丸が口にした。もちろん、クロウも驚いた。なぜ、逃げたはずの悠真がここにいるのか。それは理解し難い。不思議なのは、悠真が姿を見せると同時に、赤丸が力を取り戻したかのように立ち上がったことだ。

「なぜ、戻ってきた?」

赤丸は肩で息をしながら悠真に言った。クロウも同じことを言いたかった。今のクロウの興味は、無色よりも赤丸であった。そんなこと、黒が怒って許さないだろうが。

「俺は、逃げたくないんだ。赤い夜の戦いで、俺は何も出来なかった。俺を守るために義藤が傷ついて、それでも俺は何も出来なかったんだ。とても、悔しかった。情けなかった。だから俺は、赤丸を残して逃げたりしない」

クロウは愕然とした。あまりに愚かな悠真の行動が理解できなかったのだ。赤丸は無色の価値を知り、無色を逃がした。なのに、無色が戻ってしまったのだから、赤丸の行動は全て水の泡になったということだ。クロウは赤丸が哀れに感じた。

「菊は何をやっているんだ!」

赤丸は悪態をついた。肩で息をしながらも立ち上がったのは、きっと後ろに守るべきものがあるからだろう。想定外であったが、クロウはより長い時間赤丸との戦いを楽しむことができそうだった。

「赤菊には悪いけど、眠ってもらったよ。赤丸、俺は術士だ」

赤丸は何とも言えない表情をしていた。二人の会話の邪魔をしなかったのは、悠真の行動に興味があったからだ。赤菊は、戦闘員ではないと赤丸は言っていたが、術士としての力はそれなりものものだ。簡単に負けるような者ではない。その赤菊を眠らせてきたということは、やはり無色がついているということ。クロウは無色の力をまざまざと見せ付けられた。


 だが……


 悠真が来たところで、何も変わりはしない。クロウの圧勝に変わりはないのだ。むしろ、黒が喜ぶだけだ。


 クロウは大きく息を吸い、力を高めた。身体が膨れ上がっていく。クロウとイザベラは一体となっている。クロウの力はイザベラに直結しているのだ。膨れ上がった身体は、これまでのイザベラの身体よりも遥かに大きい。二つに割れて、イザベラとシルビアになってからこれほど大きな力を発することは出来なくなったと思っていた。だが、違う。これほどまでの力を持っている。


 クロウは吼えた。醜く、口からは涎が垂れている。垂れた涎は瓦礫を溶かしていく。醜さが増している。醜悪であり、イザベラの美しさは消えた。


 膨れ上がった黒い力から身を守るため、赤丸が最後の力を振り絞り、赤い盾を作り出していた。クロウが赤い盾を砕くのは時間の問題だ。

 黒と赤がぶつかり合う。

 黒と赤が乱れる。

 風が巻き上がり、渦巻き、大粒の雨が渦で巻き上げられる。


 負けたりしない。


 クロウの目に、必死に堪える赤丸の姿が映っていた。

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