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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の監視(17)

 クロウは前足を振るった。鋭い爪が伸び、赤丸の心臓を狙った。殺しに掛かって、死ねば赤丸はそれまでの存在。


 結果は赤丸次第。


 赤丸は素早い身のこなしで、鋭く伸びるクロウの爪を交わすと、刀で爪を斬りおとした。宵の国の剣よりも、火の国の刀の方が強度に勝るようだ。同時に、赤丸は紅の石の力を使い、クロウを押さえ込もうとした。殺せないならば、押さえつける。所詮時間稼ぎにしか過ぎない。


 クロウは押さえつける赤丸の力を撥ね退けた。クロウに勝つなど、百年早い。いや、永遠に勝つことなど出来ない。


 赤丸の紅の石の力は鎖となり、再びクロウを押さえつけようとした。しかし、それは無駄なこと。クロウは力を込めた。すると、鎖は容易く切れた。


 ただの術士が、色神より勝るはずが無い。起き上がったクロウに、赤丸が刀を振り上げた。すると、刀が赤く輝き始めたのだ。刀に紅の石の力が与えられたのだ。面白い力だ。紅の石の力を物体に纏わせる。間違いなく、刀の強度は増すはずだ。


 だが……


 クロウには大したことない。赤丸はクロウの身体を切り裂いたが、瞬時に身体は修復した。興奮で、痛みすら感じなかった。

 修復した身体で、クロウは赤丸に爪を振るった。赤丸は、赤を纏った刀でうクロウの爪を受け止めたが、クロウは力任せに赤丸を弾き飛ばした。刀で受け止めていても、踏ん張る身体が軽ければ意味が無い。弾き飛ばされた赤丸は瓦礫の山の中に落ちた。


 もう一度、赤丸は立ち上がった。


 だが、何度たちあがろうとも結果は同じだ。同じ結果しか見えない。赤丸に、クロウに勝つ道など残されていないのだ。


 クロウは再び赤丸を弾き飛ばした。


 もう一度、赤丸は立ち上がった。


 クロウは、また赤丸を弾き飛ばした。


 それでも、赤丸は立ち上がった。


 赤丸に勝つ道は残されていない。赤丸は、死ぬべき存在だ。可哀想だが、残念だが、赤丸はここで命を失うのだ。


 クロウは再び赤丸を弾き飛ばした。爪で赤丸の身体を切り裂いた。毒を使わなかったのは、クロウの情けでない。長い時間、赤丸と戦うためだ。だが、所詮赤丸はただの術士。大したことは出来ない。


 赤丸から流れる血は、雨に流れていく。赤が流されていく。赤が消えていく。このまま、赤丸は命を落とすのだろう。


 ゆっくりと、赤丸が膝を地に着いた。両手を地に着き、肩で息をしている。


 赤丸は、傷のためでなく、紅の石の力を引き出しすぎたための疲労で膝をついた。術士であれば、誰しもが経験すること。色の石の力を引き出すには、限界がある。限界を過ぎてまで力を使えば、後は命を落とすのみ。当然だ。赤丸はこれまでクロウが出会った誰よりも、長い時間戦い続けた。逃げることもせず、誰かに頼ることもせず、一人でクロウに向かい続けた。


 クロウは赤丸に止めを刺すために、ゆっくりと爪を振り上げた。


――サヨナラ。赤丸。


クロウは言った。その声は赤丸には届かない。ギュルルルと異形の者が鳴いただけだ。

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