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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の監視(12)

 打ち付けるような雨の中、クロウの力を全面に受けたイザベラが、雨を弾き飛ばしながら赤丸の元へと向かっている。クロウの監視に気づき、クロウの監視を他の仲間に伝えた赤丸。クロウにとって、いまや最も邪魔な存在は赤丸であった。


「待っていろ、赤丸」


クロウは低く言った。クロウの五感は未だに小さき異形の者と繋がっている。赤丸は、紅の石を使い、容易く小さき異形の者を押さえつけている。そして、クロウの五感はイザベラと繋がった。赤丸はイザベラが近づいていることに気づいていない。イザベラは深い森の上を飛ぶ。雨に怖気づくことなく、勇猛果敢に、強く、美しく、音も立てずに飛ぶ。


「イザベラ、行け」


クロウの目に、森の中に隠れるように建つ小屋が見えた。イザベラの射程範囲に、赤丸は入ったのだ。


「覚悟を決めろ、赤丸」


クロウが呟いたとき、イザベラは空から一直線に赤丸に向かって飛び降りた。


 空を舞うイザベラ。まるで、イーグルが獲物を見つけた時のように、一直線へ赤丸へと狙いを定めている。みるみると赤丸の姿が大きくなっていく。小さき異形の者に気を取られていた赤丸が、不意に空を見上げた。イザベラは優れた異形の者だ。このスピードについていける術士がいるはずがない。まるで、赤丸はイザベラが近づいていることに気づいているかのように、不意に空を見上げたのだ。


――赤丸!


クロウは完全に赤丸に捕らわれていた。赤丸という牢の中にいた。赤丸をライバル視しているのだ。なぜ、一介の術士の存在が、黒の色神クロウの心を乱すというのか。クロウの監視に気づき、クロウの作戦を崩し、イザベラの襲撃にさえ気づいたのだ。クロウは思わず叫んでいた。己に並ぼうとする赤丸の存在が鬱陶しかったのだ。


 イザベラは急降下を続ける。鋭い牙をむき、その牙で赤丸を捕らえるために急降下を続ける。獲物を狙う猛禽類のように俊敏に、獲物を喰らう肉食獣のように鋭い牙をむけ、イザベラは赤丸を狙っている。



 イザベラに送る力を、クロウは高めた。高めて、高めて、イザベラは全身でクロウの力を受け止めた。すると、クロウの思考はイザベラと一体になり、クロウはイザベラになり赤丸を狙った。

 イザベラと一体になったクロウは、みるみる赤丸に近づいた。


 赤丸は素早い動きで刀を抜き、上に構えた。まるで、イザベラの巨体を細い刀一つで受け止めようとしているようだった。同時に発動される赤丸の紅の石の力。赤丸の色は、優しいが強い色だった。


 クロウの放つ黒と、赤丸の放つ赤が衝突した。イザベラの身体は赤に押されて崩れ始めた。しかし、崩れるのは顔の鼻先と前足の爪程度だ。イザベラの放つ黒が赤丸を押し、押さえつけ、赤を攻めた。

 赤丸はクロウの攻撃に耐えた。紅の石の放つ力は、相当なものだ。赤丸の紅の石がキシキシと悲鳴を上げ始めた。色の衝突に空間が歪む。それは必然なこと。なぜなら、黒を放っているのはクロウである。そして、赤を放っているのは、黒の色神クロウが、紅を除いて、火の国ナンバーワンの術士と認めた赤丸なのだから。

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