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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の監視(11)

 怒りで乱れたクロウの心の中が、黒の言葉で鎮まりを取り戻していく。


――クロウ、あたしのクロウ。一体、どうしたの?


黒の言葉で、赤に侵食されたクロウの世界が、静謐な黒色を取り戻してく。黒色は静かで、落ち着いていて、安らかな色だ。安らかな色を乱すのは、残酷でめまぐるしい赤色だ。クロウは黒色を感じて、ようやく冷静になったのだ。

「俺の監視に気づくなんて……」

クロウは再び、小さき異形の者と五感を繋げた。赤丸は紅の石の力で小さき異形の者を押さえつけている。同時に、紫の石に何かを言っている。


(紅、小さな異形の者に監視されている。気をつけろ)


赤丸は、そう言った。つまり、赤丸はクロウの監視に気づき、同様の監視が紅につけられていると感じ、紅に危険を伝えたということだ。つまり、それはクロウを追い込む一手だ。紅が監視されていることに気づけば、クロウは情報を得ることが難しくなる。

「こんなところで……」

クロウは低く言った。こんなところで、自分が追い込まれるとは1パーセントたりとも思っていなかったのだ。

「こんなところで邪魔されるなんて」

冷静になったクロウは、紅を監視している小さき異形の者の五感と繋げた。紅は紫の石を使い、他の術士に監視について伝えていた。同時に、意気揚々と歩く瑞江寿和の気を義藤が引きつけ、秋幸が小さき異形の者を探している。クロウは紅から監視を離した。紅が危険を伝えたから、野江や都南、佐久までもが監視を探し始めた。

「くそっ!」

クロウは悪態をつき、監視を一斉に引き上げた。監視は良い。また、時を待って始めれば良いのだ。監視を引き上げて、今、するべきことは赤丸の始末だ。赤丸の対処だ。赤丸への憎しみが込みあげてくる。こんなところで、クロウを追い込むべき存在がいて良いはずがないのだ。

 監視を引き上げて、クロウは身軽になった。クロウの足を引くものは無く、ただ、ただ赤丸だけを見た。


――クロウ、どうするの?


黒がクロウに問うた。そして、クロウは答えた。


「決まっているだろ。火の国を喰う前に、赤丸を喰うのさ」

赤丸は、間違いなく火の国ナンバーワンの術士だ。術の力では野江が勝るだろう。剣術では都南が勝るだろう。しかし、総合力では赤丸が群を抜いている。戦場で必要なのは、総合的な力なのだから。赤丸は、人を殺すことに適しているのだ。義藤と似ているが、義藤よりも己を追い込み、義藤よりも才能に溢れている。天才の中の天才がいるとすれば、赤丸のことを指すだろう。クロウはそう思っていた。だから、まず、赤丸を喰う。赤丸を手中に収めて、火の国の術士ではクロウに敵わないことを見せ付けるのだ。紅に、敗北と絶望を教えるのだ。

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