表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
204/785

黒の監視(6)

 クロウが見つけたのは、「ソルト」だった。戦乱に明け暮れて、異国との交流をあまり持たない宵の国のクロウでも知っている。命を救う石。黒と対照的な色。黒と対照的な力。宵の国と対照的な国。雪の国の持つ、白の色神が火の国へ来ているのだ。

 クロウには分かる。ソルトが放つ、冷たい白色が。雪のように冷たく、時に美しく、時に残酷な色が。ソルトは、紅城の外にいた。紅城を見て、これからの事態を静観するつもりらしい。少しも動こうとしていないのが、その証拠だ。無色を追う様子もない。

「一足遅かったな。そこで見ていろ、ソルト。黒が火の国を喰う様子をな」

クロウはそこにいるソルトに言った。白い髪。ソルトは大柄な男に抱きかかえられていた。自らの足で歩むことを忘れてしまったお嬢様のように見えた。火の国の着物をまとっていても、ソルトが放つ白は隠すことは出来ない。

 ソルトが何を思って火の国に足を運んだのか、クロウに知る由もない。しかし、ソルトが来たということは、クロウにとって厄介でしかない。


――白の奴、何しに来たって言うのよ。


黒が地団駄を踏んでいた。黒の目には、ソルトに色神としての力を与えた白が見えているに違いない。

 クロウはじっとソルトを見た。か弱き少女に、大きな力があるとは思えなかった。しかし、クロウは知っている。偶然にも、今のソルトはクロウよりも色神としての経験が浅い。クロウは先代のソルトを見たことがあるのだ。今のソルトは、幼い。幼く、小さい少女だ。大きな力を与えているのは、白だ。白がいなければ、ただの少女に過ぎない。もちろん、それは紅やクロウも同様なのだが……。

「黒、あまり騒ぐな。じっとしていろ」

クロウはソルトを見た。そして、黒の石を取り出すと、二つの黒の石を思い切り打ちつけ砕いた。砕いて小さくなった黒の石を、クロウは窓の外に投げた。飛び出した異形の者の数は無数だ。紅の動き、ソルトの動き、無色の動き、赤丸の動き、紅城に残る術士の動き、クロウは監視するのだ。この目で見て、最適の時に動き始めるのだ。すべては宵の国と、宵の国で待つヴァネッサのため。宵の国を消したりしない。いずれ、流の国も姿を見せるだろう。だからこそ、クロウは油断したりしない。

「安心しろ、黒。黒が最も優れた色だと、最も素晴らしい色だと、このクロウが証明してみせる」

クロウは、黒の頭を撫でた。クロウの目には、解き放った異形の者が見た景色が次々と写った。めまぐるしく変わる景色の情報をクロウは必死で処理した。火の国にクロウの目は解き放たれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ