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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の監視(5)

 術士は生きている。所詮、彼らは紅に尽くす者たちだ。クロウが奪ったところで、何にもならない。そんなこと、理性で分かっていても、宵の国で待つヴァネッサを思うと少しでも力を増やしたいと思うのだ。

 クロウはもう一つ、黒の石と取り出した。それは、イザベラの石ではない。クロウはイザベラが傷つくところを見たくない。クロウは黒の石を一つ、窓の外に投げた。無色の元へ向かわせるのだ。奪うのだ。紅の仲間の術士を、一人、また一人と削っていく。それがクロウの行うこと。


 寿和について歩く紅らは、寿和から離れられずにいるようであった。当然だ。寿和は、官府の中の権力者。容易く逃げることは出来ない。紅の相手は、寿和に任せておけば良い。紅らは、簡単に「源三」に近づくことが出来ないだろう。

「そのまま、紅から離れるなよ、寿和」

クロウは呟いた。寿和が紅から離れなければ、クロウは自由に動ける。自由に動いて、クロウは赤の術士を撹乱し、紅を追い詰めることが出来る。紅が官府にいる事を良しとして、クロウはもう一つ屑石のような黒の石を取り出した。偵察に使うにはもってこいの石だ。その石を窓から外に投げると、クロウは紅城へと向かわせた。紅城に残る赤の術士の行動も気になるのだ。もしかすると、火の国に足を運んでいるだろう、他の色神を見つけることが出来るかもしれない。クロウが優れた策士であるのは、情報収集に長けているからだ。黒の石を投げた外は、雨が降り始めていた。


 クロウは情報を整理した。


 紅の近くにいるのは、義藤と秋幸。二人とも、優れた術士である。行動力のある紅に巻き込まれて、官府に来たというところだろう。彼らは紅を護衛しつつ、紅と共に官府の中にいるだろう「源三」を探している。義藤、秋幸、欲しい術士だ。


 無色は山の中にいる。無色を守ろうとした術士と犬、そして薬師と二人の術士。家の外にいるのが、義藤の片割れ。家の中にいるのが女の術士。奇妙な姿をした薬師も、術士であるようだ。なぜ、義藤の片割れが家の外にいるのか、クロウには理解できない。ただ、義藤の片割れも、女の術士も、優れた力を持っている。彼らは、平和な火の国の中にいながら、鋭い目をしている。その目は、宵の国の兵士の目だ。赤丸という名の義藤の片割れ。赤菊という名の女術士。葉乃という名の薬師。ここを攻め落とすのは、大変そうだった。赤丸も赤菊も、欲しい術士だ。


 紅城は混乱の中にある。突如消えた紅。そして、残された手紙。怒り狂う美しき女術士の名は野江という。下村登一の乱の時も、彼女の働きは立派だった。そして、術を使えない剣士都南は、不機嫌を露にしていた。刀の柄を握り、無言で怒りを抑えていた。怒りに任せる野江と都南を抑えているのが佐久だ。術士としての才能は申し分ない。そんな三人の油の乗った術士を見つめるのが遠次。二十代後半。野江、都南、佐久の三人の才能を眠らせる必要はない。欲しい術士だ。


 紅城の周りでもう一人、クロウは面白い人を見つけた。

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