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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の監視(4)

 瑞江寿和は人を殺したことがある男だ。それも、大した覚悟もなく、ただ殺した。殺したことの罪さえ理解していない。だから、何かの拍子に動揺するのだ。

――どうしたの?クロウ。

黒が心配そうにクロウを覗き込んだ。クロウは小さき異形の者を使い、紅と寿和を見た。少しも紅を紅だと気づいていない寿和。そして、瑞江寿和を利用して紅城へ足を踏み入れる紅。紅を守る二人の術士。クロウは、じっと彼らを見ていた。

――クロウ?

黒がクロウの肩を叩いた。

「何でもないさ、黒。火の国は何とも面白き国だと思ってな」

クロウは、黒にそう答えた。クロウは、寿和が誰を殺したのか気になっていた。寿和が誰かを殺したのは明らかなことであるが、誰を殺したのか、が重要なのだ。寿和は、紅を見て怯えたのか、術士の男たちを見て怯えたのか分からないが、殺した者に似た者がいるということだ。直接寿和を問い詰めたところで、プライドの高い寿和は答えたりしないだろうが……。

 寿和は、憎き紅がいるとも知らずに、洋々と先頭を歩いている。寿和の後に続くのは、女物の羽織を羽織った術士の男だ。おそらく、あの男は生まれが良いのだろう。不思議と、赤が似合う男だった。だからかもしれない。クロウはあの男に興味を持った。紅と同様の興味だ。確か名は……。

「義藤」

クロウは思わず口にしていた。もう一人、義藤と同じ顔をした者。どちらかといえば、そちらの男の方に興味があった。下村登一の際、迷いもなく下村登一を殺そうとした。宵の国でも、生き残ることが出来る男は、義藤の片割れだ。

 欲しいな。とクロウは思った。火の国に来て、クロウは火の国の内情を見た。そして、客観的に宵の国を思った。だからこそ、思うのだ。宵の国に欲しいと。欲しいと思うのは、赤の術士だ。一人でも良い。ヴァネッサだけでなく、クロウには仲間が必要なのだ。宵の国でも十分生き残れる者。仲間になって欲しいと思える者。紅は、全てを持っている。この小さな島国で、紅は仲間に囲まれて生きている。

――どうしたの?クロウ。

黒がクロウの背に抱きついた。色神である黒からは、何の温もりも感じない。しかし、黒の色が、クロウの身体を伝わって流れ込んできた。

「紅の周りには優れた術士が多い。そう、思っただけだ」

クロウが言うと、黒はクロウの耳元で笑った。

――奪っちゃえば良いのよ。クロウ。

黒はクロウに言った。欲しいものがあれば奪え。それは、宵の国にとっては当然のことだ。だから小国は隣国を攻め続けた。そして、自らの国を大きくしようと覆ったのだ。

 クロウは思った。これから、火の国は官府と紅の戦いになる。ならば、混乱に乗じてクロウは奪えば良いのだ。無色と何人か術士を奪い、そして火の国を内部崩壊へ導く。それだけのことだ。

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