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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と来訪者
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黒の監視(3)

 クロウは源三を見つけ出して、これからの策を練った。


――官府の中の二つの勢力。


 クロウは、瑞江寿和に手を貸す。瑞江寿和を使い、官府と火の国を内部から破壊する。源三が寿和と対照的な存在であるならば、クロウが取り入るに難しい者だと言うことだ。

 クロウは、官府の中を、小さき異形の者を走らせた。黒の力が官府の中を駆け巡る。すぐに、瑞江寿和を見つけた。門前に、怪しげな輩が三人おり、守衛が困惑していた。寿和は何を思ったのか、怪しげな輩を三人中に招いていた。クロウはその様子を見て、思わず笑った。三人の中に紅が混じっているのだ。ならば、残りの二人は、紅を守る術士ということだろう。最も目立つ風体の男は、常に紅の傍らにいる男だ。

「紅」

クロウは遠く離れた場所にいる紅を呼んだ。

「紅、クロウはここにいるぞ」

クロウは紅を呼んだ。もちろん、紅はクロウの言葉が聞こえたりしない。


――全く、あたしのクロウはこれからどうするつもりなのかしら?


いつの間にか現れた黒が、クロウの横に座った。膝を立てて、少し拗ねたようだ。機嫌を損ねた黒の頭をクロウは軽く撫でた。

「心配するな。黒。ほら、なにやら面白い雲行きだ。紅は官府へ。無色は山の中へ。ここに主役を揃えてやらないといけないな」

クロウは山の中に隠れた無色を見失ったりしていない。分が悪いから、離れているだけだ。無色の護衛についているのは優れた術士だ。下手に暴れると、紅と対峙するために必要な体力を失うことになる。いくら色神といえど、無尽蔵に力を使うことができるわけではないのだから。しかし、それは紅も同じこと。紅の持つ紅の石は、決して色を失わないだろうが、紅自身の体力には限界がある。紅とクロウが直接対峙したとき、紅の周りにいる術士が出張ってきては、クロウの分が悪い。


――あいつら、双子でしょ。ほら、無色と一緒にいる男と、紅の傍らにいる男。あの二人、厄介なものね。


黒は笑っていた。


 クロウは、紅と対面する寿和を見た。寿和は紅が紅だと気づいていない。しかし、クロウは寿和の様子を見て、気づいたことがあった。

「人を殺したことがあるな」

クロウは低く呟いた。火の国は平和な国だ。帯刀する者もいるが、抜かれていることは滅多にない。それは、火の国の民と混じり、都に足を踏み入れたクロウだから分かるのだ。刀を抜いたのは、異形の者を前にしたときの術士くらいなものだ。

 そのくらい火の国は平和な国だ。小さな島国で、同族で、平和を作り上げている。


 しかし……


 戦乱の宵の国で生きてきたクロウだから分かることがある。何度も戦い、戦場で多くの命を奪ったクロウだから分かることがある。人を殺したことがある者の独特の空気。今まで、寿和を見て感じなかったが、今は違う。今、寿和を見て分かることは、瑞江寿和が人を殺したことがあるということだ。

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