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私の会社のBL日記  作者: 森 永
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5話 筋肉【後編】

 一頻り二人は笑いきり、落ち着きを取り戻していたが、新庄に至っては笑いすぎで少し涙目になっていた。

 その姿に、心うちで闘志を燃やし、覚えとけよと考えていることを、新庄に悟られないようにしながら二人に、最初の行動の回答を求めた。


 「で、柊さんの腕と新庄の腕の方さを比べてた感じね?」

 しかし、その解が的外れだったのか、私の言葉に対して、二人はキョトンとした目で首を傾げながら、互いの顔を見合わせる。


 「えっ、違ったの?」

 「うん、海原が俺の腕、触ってみたいって。」

 「・・っ、そうなんだ。」

 詳細確認をする為に発した言葉の返事に、新庄への怒りは放り投げられ、触りたい!?え?おねだりしたの海原くん?という言葉を、必死に飲み込み勢いよく海原を見る。すると視線はぶつかり海原は、頷き新庄の言葉に同意を示した。


 「はい、鍛えてるって言ってたから、どのくらいになったんですか?って話から触ってました。」

 「へぇーそうなんだぁ。どうだった?」

 私は、崩壊しかける顔面の中、感想を海原に求めると、フッ鼻で笑い

「まだまだですね。」と返してきた。


 「いや、俺腕そんなに鍛えてねぇし!!あと、柊さんの後は、誰でもまだまだだって・・・。」

 新庄は、海原の感想に、間髪入れず過剰反応を示す。

 しかし私の脳内では、全て飯のタネとも言わんばかりに、格好つけたかったのに失敗したから拗ねてるんですよね?解釈!解釈!もうその言い訳もおいしいです。と興奮は激しさを増していった。


 「じゃあさ、腕鍛えてないなら、どこ鍛えてるの?」

 これは、純粋な疑問でもあった為、邪推一切なしで新庄に質問を、投げかけた。

 

 「腹筋は、一応割れてる…し。」

 「触りたいです!」

 先程の海原の言葉を気にしてか、語尾がどんどん小さくなる新庄に対し、興味津々に要望をする海原。

 そんなやり取りが繰り広げられる中、私は息を殺して壁又は空気へ徹し、脳内では、本当は見た事あるんだけど、触る口実でも欲しいのかなぁ?、と高速反復横跳びするのを、一切表に出さずに二人を眺め続ける。


 「んー。まぁ、いいよ。」

 海原の触りたいに、躊躇しながらも了承し、着直したばかりのジャケットボタンを外し始める。

 その側で、大人しく待てをしている海原が、いつもより更に大型犬に見え、微笑ましく思えてしまう。


 新庄は、ジャケットを脱ぎ長椅子の上に置くと、「はい。」といいながら、ズボンに入れていたシャツを引き上げ、筋は深くはないがしっかり割れた腹筋が露わになる。

 その予想外の状況に、私は言葉を失い、脳内ではライブ状態で騒ぎ立てる。

 一方、海原はその様子に動揺せず、割れた腹筋をなぞる様に触れ「すごっ、めっちゃ硬い。」と小声で感想を述べていた。

 二人の様子を、前のめりに興奮しながら、無言で眺めていると「ん…ふっ。」と色めいた笑い声が、新庄から漏れ聞こえ、腹筋と海原を凝視していた視線を新庄の顔に向ける。

 向けた先には、こそばゆいのか、拳で口元を隠し笑いを必死に堪え、顔を少し赤くした新庄がいたのだった。

 

 「えっ最高なんだが。」

 漫画なら絶対鼻血出ていたなと、頭の一部では冷静に考えるも、大部分はパーティ状態で、次のネタにさせて頂きます。と小声で呟き思わず合掌してしまう。


 執拗に触っている海原に耐えれなくなったのか、新庄は海原の頭を軽く(はた)き、火照った表情で「くすぐったい!」と触る手を止めさせた。この瞬間ほど、喫煙所でなく二人きりの部屋であれ、と思ったことは無い。


 止められた海原は、叩かれた場所を撫でながら、少し残念そうに顔を上げる。

 その様子から、もっと供給をしてもらいたい衝動が私の思考と身体を動かした。


 少し乱れた服装のまま息を整える新庄に、気付かれないようそっと海原に近づき背中に隠れ、指示を伝えるため耳元で囁く。

 「奴は今、弱ってるから、もっとくすぐってやれぃ!」

 伝えおわると、笑顔でしっかりと親指を立てる。

 それにバレないように頷き、良く揶揄われる海原も、ここぞとばかりに仕返しの瞬間と思ったのか、「顔、あっつ」と額の汗を、手の甲で拭う新庄に近づき、両わき腹に手を入れくすぐり始めた。


 「っっっ!!!」

 「ははっ、ちょっおまっ!!」

 「おぃっ!!はははっ、やめっぐっ!ははっ、ほんっっとに。」

 

 「・・・・・っ、やめろ!!」

 「いっっ!!つぅー。」

 十数秒間ではあったが、新庄はくすぐり始めた海原の腕を、最初引きはがそうと藻掻き、抑えきれない笑い声を上げながら、引き剥がせない腕を掴むのを諦めて、止めない海原の頭に強めのチョップを落とした。

 本気で痛がる海原と、肩で息をしながら距離を取る新庄、ご満悦の森永、とゆうカオスな状況が繰り広げられる喫煙室に、カラリと音がして、森永の直属の上司、立花が入ってきた。


 「声聞こえてるぞ。」

 立花は室内の様子を見渡しながら告げると、淡々と煙草に火をつけ、壁にもたれながら煙を吹かせる。

 

 「はぁーはぁー。すいません。」

 「申し訳ないです。」

 「すみません・・・。」

 騒いでいた3人は各々に謝罪を口にし、その言葉に立花は一度頷き、再度口を開いた。


 「まぁ、ここの喫煙所は基本人いないが、来る奴は来るから。定時までは気を付けなよ。」

 「はぁ、はぁ・・・っふぅ。はい。以後気を付けます。」 

 「気を付けます。」

 「ます。」


 立花は女性課長で、ピンヒールを履ききっちりとスーツを着込んでいる為、某所に需要のある女王様の風体に圧を感じる。

 いつもなら気兼ねなく話せる上司だが、騒いでいたとゆうこともあり、続きの言葉を発することが出来ず室内は静まる。他の二人も同様なのだろう、海原に関しては前回、煙草の件で告げ口している筈なのに、今回は何も言わなかった。

 事実数秒だが、静まり返る室内は時間を長く感じさせ、気まずさから煙草を取り出すと、三人とも同じことを考えていたのだろう、海原も新庄も同時に煙草を手に取っていた。

 各々無言で煙草を吸い、新庄は乱れた服を整え脱いでいたジャケットを着直していた。

 そんな様子を無言で見つめていた立花が口を開く。


 「・・・。森永。」

 「はい?」

 煙草の灰を灰皿に落としながら返事を返す。


 「午前の資料はもうできたの?」

 「あっ、共有フォルダに入れてます。」

 「分かった、念のため確認するから、一緒に来てくれる?」

 「あっ、はい、承知しました。」


 持っていた煙草を消して、立花の後ろを追いかけるように喫煙室を後にする。

 出る間際振り返りながら胸の前で手を立てて謝罪のポーズだけすると、二人は小さく手を振って見送ってくれた。


 楽しかった時間が現実に引き戻されたが、経過良好のいい補給になり。この日新庄は先輩受けですと確信に変わるきっかけにもなったのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

次回  

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