4話 筋肉【前編】 ※BL要素少なめです。
ここ数日連勤と残業が続き睡眠不足で、今日に関しては低気圧のせいでいつもより片頭痛が酷く、眉間に皺を寄せてしまっていた。
鎮痛剤でも抑えれない痛みが頭を重くし、空いた手でこめかみを抑えつつ、気を紛らわすために喫煙所に向かう。いつもの喫煙所に着くと、入り口に影が見え、出てきた時に衝突しないようにと、廊下の端を歩く。中から話し声が聞こえ影の主が喫煙所から出てくる。
「おっ森永、お疲れ様。今から煙草か。」
「あ、柊さん、お疲れ様です!!ですです!!」
出て来た人物から声を掛けられて視線を上げると、それが営業部MJの柊さんだと気づき、向かう足を止め、眉間の皺を解き口角を上げながら、手に持っていた煙草を見せながら答えた。
その回答に、柊さんは優しく「ゆっくり、吸っておいで。」とひらりと掌を見せ、目の前を通り過ぎていく姿を、私は最後まで視線で追った。
年齢は、50代前半と渋さが際立つイケおじ、またはスパダリと呼んでも過言でなく、彼と関わった事がある社員層からは、絶大な人気と信頼がある人物だった。
そして、この喫煙所で会えるのは、本当にごく稀で、いつもは上層部が占領している喫煙所に居る為、ここでは、レアキャラ扱いであった。いつも三人で軽い雑談で終了の短い時間も、この人が居るだけで喫煙所の滞在時間は伸び、少しでも長く話そうとちょっかいを掛けたり、みんなが話しかけるとゆうイベントが発生する、さっき声が聞こえていたのも中の人物と話していたのだろう。
しかし私自身が、今回は行き違いとゆうこともあり残念な気持ちが胸を占めた。
柊さんへの名残惜しさと、頭痛もありきで中も見ず、喫煙所の引き戸を開けながら、ため息を吐く。
「はぁ。」
「ん?森永お疲れー。」
「お疲れ様です。」
そこには、新庄が、シャツの袖を肩まで捲りあげ力瘤を海原に披露し、海原はその腕を指先でつついていた。
「あー。二人ともお疲れー。」
「テンション低いじゃん。」
新庄は、腕を下ろし袖を直しながら、こちらに身体を向けて話しかけてくる。
いつもならお触りイベント開催と、はしゃぎたいところだが、レアイベント遭遇出来なかったことに、それだけでは、テンションが上がることはなかった。
「柊さんが、さっきまでいたと思うとショックすぎる。あと頭痛い!!」
「あー。ほんと、森永は柊さん好きよな。」
新庄は、何かを察して苦笑いしながら喫煙所に設けられた窓を横目に、薄暗く雨が降る空を見る。
「あと、片頭痛か。薬は飲んでんの?」
「一応ね。頭痛いけど、さっきやってた事詳しく教えてくれたら直るかも。」
テンションは上がらないが、欲求には正直な物で、先程までの二人の行動も気になっていた事もあり、質問を投げかける。
「治るってなんだよ。柊さんの話中心になるけどいいの?」
笑いながら返してきた言葉に推しの名前が含まれていて、項垂れていた身体をピンと正した後に、煙草に火をつけ聞く体制を取り新庄をまっすぐ見た。
「猶更、詳しくお願いします。」
「くっは、おk。」
その姿は某有名アニメのゲ〇ドウポーズのため、新庄は吹き出しながら返事をする。
私は、期待に少し鼻を膨らませてしまう。
「まぁ、まず柊さんとジムの話してて、どう鍛えるのかとかおすすめのプロテイン教えてもらうことになって。」
「ほう・・・。」
「俺もジム通ってるてのもあって、海原も通った方がいいかなって柊さんに質問したりして。」
隣で話の内容に同意しながら頷いている海原を置いて、新庄は肩まで腕を持ち上げながら指を指し会話の内容を伝えてきた。
「柊さんがパンプアップしたらもっとすごいんですけどねって。で俺らが、観たい触りたいってお願いしたわけ。それから柊さんに触らせてもらって、着やせしてあんまり分かんないけどけど、脱いだら結構しっかりしてるなって話で。」
その話に、組んでいた手を解き、発狂交じりに机を叩いた。
「私も見たい!触りたいぃいい!!」
叩いた勢いで机に置かれた灰皿が揺れカランと金音を立てた。
「すごく硬かったです!!」
「海原ぁぁああああ!!」
残念がる私に追い打ちを掛けてくる海原に、宿敵を見るように睨みながら、某モノマネYouTuberパロディ風に名前を叫ぶ。名前を叫ばれた海原は驚き、胸の前にガッツポーズをしていた両腕を下ろし「すいません。」と謝罪の言葉を口にしたが、私に謝罪をして来ても睨むのを止めず海原は、だんだん蛇に睨まれた蛙のように大きな身体を小さくしていった。
そんな二人の状況下に新庄が、私と海原の間に入り込んできたかと思うと、海原を背に隠し私の視線から守るように壁となった。
「止めてやれよ。仕方ないだろタイミングなんだから。」
「ぐぬぬぬっ」
悔しさと正論に奥歯をグッと噛み、もう一度背中に隠れる海原を睨んだ。しかし睨んでも柊さんが、戻って来ることは無い事も分かっている為、大きなため息を深く吐き出し気持ちを落ち着かせる事にした。
そして、諦めたように落ち着いた視線を二人に送ると、そのタイミングを今か今かと狙っていたのか、新庄が満面の笑みで口を開いた。
「まっ、俺は揉みしだかせてもらいましたから。」
その言葉に間髪入れず、机は私の拳によってバンっと大きな音をたて、私は、肺いっぱい大きく息を吸い込んだ。
「すぅぅぅぅぅぅぅ。・・・・・・っちきしょーーーー! 」
自重を踏まえつつも、抑えきれない思いの丈を言葉としてぶつける。
そんな半狂乱な私の姿に二人は腹を抱えながら笑い、新庄に至っては、床をバシバシ叩きながら笑っていた。
否めない気持ちの中、二人が笑い声が喫煙所内に響き続けた。
最後までお読みいただき有難うございます。
次回 / 【】更新予定。




