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私の会社のBL日記  作者: 森 永
3/4

3話 煙草

 ブラック企業とはどうしてこうも社畜に優しくないのかと思う日々に疲弊し、ずっとモニターと睨めっこしていた為か目の奥に疲れを感じる。

 決められた終業時間はもうすでに終わっており、使い捨てのコンタクトを外しメガネにかけ直した。

 化粧室から残業に挑むために先に喫煙所による事にする。

 いつもの時間では無いし、終業時間もとっくに超えてるし、きっと誰もいないから喫煙所で暴れてやろうかと考えが過る中、すぐに吸えるようにと煙草を箱から取り出しながら向かうと、喫煙所の方から騒がしい声が聞こえてきて向かう足取りは早くなる。


 角を曲がるとそこには予想通りの人物の姿が二つ並ぶ。

 その姿に心躍る気持ちを押さえつつ、引き戸を引き、騒ぐ二人を諫める為に開口する。


 「流石に騒ぎすぎ!」

 入り口に二人して背を向けていたからなのか、勢いよく開けた扉と声に驚いたように振り返ってきた。

 

 「定時組居ないとしても、自重はしな。」

 言葉では辞めるように伝えて見せるが、内心はもっとやれ!っと喜びが反復横跳びをかましている。

 顔の筋肉を引き締めながら先に出していた煙草に火をつけるためポケットからライターを取りだしカチリと音ともに煙草に火を近づける。

 

 「森永さん!!火かしてください!!」

 火をつける姿を見ていた海原が、前のめりに要望を伝えてきた。その言葉に疑問を持ちながらも自分の煙草に火を灯し、2.3回吹かしながら後ろの新庄に目をやると、全力で横に首を振っている。その動作によって何かが、起きていると察しライターを渡す動作はせず、好奇心で海原に質問を投げかける。


 「どうした?ライター忘れの?」

 「違います!聞いてください!」

 身長は私の頭二つ以上高い海原が身体を少し丸めながら力強く「忘れた」に対して否定してくる。

 その後ろでは、にやりとからかい笑う新庄。


 「聞くのはいいけど、ちょっと声押さえなー。」

 落ち着かせるように掌を上下に振りながら「どーどー」と伝える。

 興奮で少し顔を赤くした顔を上げ、じっとこちらを見てきたと思うと懇願するように助けを求めてきた。

 

 「新庄先輩にライター取られました。火貸してください!てか、取り返してください!」

 大型犬のように目の奥を潤ませる海原の言葉で真相は全て掴め、後ろでニヤニヤしていた新庄に対して好きな子いじめる小学生かよ!最高です。という視線を送り手に持っていたライターをポケットにしまい込んだ。

 「えっ!?」

 貸してもらえると思っていたのか、海原は驚きで声を上げる。

 「ごめんライター持ってないわ。」

 「今持ってたじゃないですか!」

 「イリュージョンが起こって消えたなぁ。」

 ワザとらしく棒読みで答えて、慌てふためく海原を新庄と二人で楽しむ。

 「いやー、煙草がうまいわー。」

 新庄も乗っかりながら棒読みで海原に伝えると、新庄の前に立ち身長が近しい二人でもみ合いながら、新庄の吸っている煙草を奪おうと海原がもがく。

 

 「火ついてるから危ないって。」

 「じゃあライター返してくださいよ!」

 それを横目に、最高においしく煙草の煙を吹き出す。二人が子供の様にはしゃぐ中、ふと思いついた提案を投げかける。


 「ライター無いなら、火種を新庄から貰えば?」

 「え?」

 海原がその言葉に動きが止まりこちらを見てきては少し無言になり考え込む。


 「どうやって火種貰うんですか?」

 「おっ。」

 まさか、もらい方を聞いてくるとは思わず、歓喜が漏れる。きっと顔面崩壊並みに笑みが漏れてしまっているんだろうなと思いながらも、震える声でその質問に回答を示す。


 「あのっっ、海外のドラマとか、えっ映画とか見た、っことない?」

 「見たことありますけど、どれですか?」


 真剣に聞き入る言葉の後ろで新庄と目が合ったが、先程のいたずらな笑いは消え、気まずそうに目をそらしてくる。その姿にさらに二人を掻き立てたくなり海原に詳しく方法を伝えるため動作も加えつつ伝えていく。

 「まず、火のついてない煙草をくわえて、ついてる煙草の先に合わせるじゃろ、くっつけた後にいつも通り煙草に火いつけるみたいに吸えばいいんだよ!吸えば!!」

 少し興奮気味に話していた事より、早くその姿が見たいが故、動作も大きくなる。


 「新庄が動いて着けにくいなら、動かないように腰に手を回して固定すればいいんだよ!」

 「おい、森永面白がってるだろ!?」

 真剣に聞く海原に対して、野次を飛ばしてくる新庄。新庄の言葉など、今は不要だと言わんばかりに無視をして話を続ける。


 「海原君、いじめてくる奴には、目には目、歯には歯、煙草の火種には火種だよ!」

 「了解です!森永さん!」

 しっかり親指を立てて海原を見送り、煙草を箱から出し咥えてから、新庄に迫る。ワクワクと動悸が止まらない状態で、吸っていた煙草の灰を落とすのを忘れ二人の様子を見入る。

 海原は顔を近づけると、煙草の先と先を合わせ頑張って吸ってみる。意外に新庄はじっと海原のされるがままに火が着くのを待っているが、うまく煙草が着くことはなかった。

 

 「はへ、ふははい。」

 加えたまま火が着かない事に戸惑う海原の煙草を無言で取り、新庄は咥えていた煙草を海原に咥えさせる。

 「んっ!?」

 そのまま何も言わず海原の腰を引き寄せ煙草に火を着け体を離し2回ほど吸い、煙草の火を安定させたかと思うと、空いた手で海原に咥えさせていた煙草を取り着けてあげた煙草を海原の口に当て咥えさせ、ふっと笑みをこぼしたかと思うと徐に「下手くそ。」と笑いかけた。


 「眼福です。」

 お前が付けてあげるんかい!!というツッコミと海原の言葉より先に、感想を口にしてしまう。

 「え?なんか言った?」

 「ん?」

 二人には、声の意味まで届いていなっかった様で安心しながら、首を横に振り何も発して無い体をとる。


 「海原君吸えてよかったね!」

 煙草を咥えたまま二回首を縦に振り、吸った煙を吐き出す。

 「やっと吸えました!」

 顔を綻ばせながら喜んで見せる、その表情を確認した後に、もう殆ど残ってない煙草を消す新庄に顔を向ける。


 「海原君のライター返してあげなよ。今日持ってないなら私があげようか?」

 「ん?森永持ってるならもらってい?」

 「いいよぉ。」

 ポケットに閉まっていたライターを取り出し渡す前に、吸えなくなった煙草を捨てて新しものに火を着け直し、煙草を咥えたまま「はい」っとライターを新庄に渡す。その様子に本当に動揺が隠せないのか新庄と森永を交互に無言でみる海原に、新庄は何も反応せず受け取ったライターで火を着け、海原から奪ったライターと入れ替えるようにポケットに入れ、取り出したライターを海原に差し出した。


 「はい。」

 「嘘ですよね。」

 海原は、差し出されたライターを受け取りながら呟く。


 「返してもらえてよかったね。」

 「お前、海原に変な事教えんなよな。」

 「海外の映画見てるみたいでよかったよ!」

 海原を無視しながら新庄と会話を続けた。その様子に再度さらに大きい声を海原は上げた。

 「お二人とも嘘ですよね!えっ僕遊ばれてますか!?」

 灰皿が置かれたテーブルを思い切り叩くふりをしながら声が喫煙所に響く。


 「うん。」

 「まさか森永も乗ってくるとは思わなかったし、なんかえぐい事させられたし。実質俺が被害者じゃね?」

 私は、自分のしたことを棚に上げ被害者振る、新庄に対して少し怪訝な目を向けた。

 「いや、人を呪わば何とか的な感じだし、てか、やり慣れてるから絶対戦犯だよこいつ。」

 煙草を持った手で新庄を指さしながら海原に言葉を投げかけるが、海原はそんな事どうでもいいようで「最初のやり取り含めて、ホントにっ」と言葉を詰まらせる。


 「ちゃんとライター取り返してあげたじゃん。」

 悪気なく結果論だけを語ると、海原は煙草の火を消して。喫煙所の入り口に向かったと思うと引き戸をあけ部屋に残る二人を見るため振り返る。


 「いじめてくる先輩がいるって、課長に言ってあげますから!!」

 そう捨て台詞を吐き、部屋を走って出て行った。

 走り去る海原の足音が遠くなると、静まり返った喫煙所で横目に新庄を見る。


 「フォロー入れといて。」

 「ははっ。大丈夫、ちゃんと言っとくから。」


 海原の事はちゃんとわかってます。と言いたげに放たれた言葉を深呼吸で取り込み咀嚼し幸福を感じる。海原が居なくなった喫煙所で残った煙草を吸いながら少し雑談をして、互いの残業に健闘を祈った。


 その後の残業が3時間以上続くとも知らずに・・・・。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


次回「4話 筋肉【前編】」5/4 更新予定。

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