1話 コーヒー
いつもの時間にタバコを吸うために喫煙所に向かう。
その日もクレーム対応で精神は擦り切れ、心の暴言を抑えるためにも必要な時間である。
喫煙所はビル内にあり、入り口はガラス張りだが入り組んだ場所の一角の為そこに向かう人か入り口前の自販機に用がある人でないと中を見る事は基本的にない。
入口近くにつくと何やら中から騒ぐ声が聞こえてくる。
引き戸になった扉を開けるとそこには営業部署のいつもの二人がいた。
「お疲れー」
「おっお疲れ!!」
「お疲れ様です。」
気安く挨拶を返してきた新庄は、入社時のオリエンテーションから何度も顔を合わせているから知らない中ではない、その隣に立つ海原は新庄に年近い後輩で両方喫煙者とゆうこともあり、よく一緒に喫煙所に居る。
「外まで声聞こえていたけど、どした?」
私が入室したことによって止まっていた話題を聞きたいが為に質問を投げかけると、新庄は思い出した様にいたずらっ子の顔をして話始める。
「あっそれそれ。ちょ森永はブラック飲めるよな?」
「企業としては飲み込めないけど、コーヒーなら、まぁ。」
「んで、こいつがブラック飲めないってゆうから飲ませてんの!」
指をさされる海原の手にはブラックコーヒーの缶が持たれていた。
「聞いてくださいよ!森永さん!ほんとに苦くて飲めないってゆってるのに先輩が。」
「まぁ、好き嫌いはあるし仕方ないんじゃない?」
既に一口は頑張って飲んだのだろう、口元を拳で隠し苦い顔をしている。
「喫煙者ならもっと苦いの吸ってるから行けるってゆってんのに。」
声をあげて笑いながら海原をからかい続ける。
二人が嗜む煙草は新庄はアメスピで海原はメビウスのメンソールだ。
「海原君はメビウスメンソでしょ、あんま苦くないんだし。あんまり揶揄ったら嫌われるよ。」
「いやいや、可愛いと思わん?」
「っんぐっ!」
「えっ何?」
「大丈夫ですか?」
新庄の言葉に滾ってしまい思わず声が漏れるが取り繕い心配で声を掛けてくる海原に向け伝える。
「大丈夫、いつもの発作だから。」
「それ大丈夫じゃないやつですよね!!」
「まぁ、私は置いといて、カフェオレとかでいい?」
「いいんですか?」
外の自販機を指さしながら伝えると、さすがわんこ系男子しっぽが見えるかのように喜び声を上げる。
「ん、いいよ、いいよ。それは私がもらうわー。」
「ん。」
私の提案を阻止するように、隣の新庄が煙草をくわえたまま先に買ってあったであろうカフェオレを海原に差し出す。
「えっ?これ先輩が飲むってゆってませんでしたか??」
差し出されたカフェオレと新庄を交互に見ながら驚愕している海原置いて、手に持っていたブラックコーヒーを取り上げ口をつける。
「俺の後輩だから、森永は世話焼かなくていいよ。」
「っっっ。おK分かった末永く世話してやって。」
「ん?おう?」
言葉の意味を理解していない状況で困惑した返事をする新庄へ悶絶発狂一歩手前で頑張って感情を押しとどめ、おいしそうにカフェオレを飲む海原に癒される。
私のすり減った精神は完全回復し、万能エリクサーとして供給いただきありがとうございます。とおいしく煙草を吸いきって喫煙所を後にした。




