第一話 転校生下
コツコツと靴を鳴らしながら廊下を歩く個々の生徒であろうと思われる二人の少年がいた。
「今からどこにいくの?」
「俺らの活動場所だ」
そう背の少し高い少年がいうとまた沈黙が始まってしまった。この状況に少年は少し不安を覚えた。さっきはあんなに堂々と言ってしまったがよかったのだろうかと心の中で自分の声がこだまする。
「着いたぞ。ここが俺らの活動場所だ。」少年は誇らしげに言ったように見えた。
転校生・下
△ 中に入ると、数名のこの学校の生徒たちがいた。
「剛、今日遅かったな。なんかあったのか?」
「いや、学校にAランクのフォンセが出た。それを片付けてきたからな」
「いいなぁ。俺もやりたかったのに~」と会話に割り込むように入ってきた彼はどこかで見たことがあったような雰囲気を僕は感じ取った。
「んで?そいつ誰」と入って初めに高橋君と話していた少年が訪ねてきた。慌てて僕は自分の紹介を始めようとするが、先に高橋君が
「新しくこのチームに入る将人っていうやつだ。一つよろしくな」
簡単に言っちゃってるけど僕何にもできないけど大丈夫かな…
他の人たちは、
「よろしくね!」や「歓迎するよ~」等の声が飛んでくる。そこまでここの人たちはいい人そうだ。
「まぁ、ここにいる中で本当に戦闘に参加できるのは剛とあの二人しかいないけどね」と少女らしき生徒が話す。
「一人は、一応この学校の校長の息子である四一歩輝、珍しい苗字だよね。名前もだけど。もう一人は、この地区の責任者の息子の葛葉光紀君。そして君も知ってる高橋剛、この三人がうちの主力部隊かな?そのほかは大体が魔術でサポート役か、医療班に分かれるね。あ、ごめん自己紹介が遅れた!私は『紅葉香織』だよ。よろしくね!」というと、香織さんが続けて放そうとしたところを、
「能力の話はするな。まだ誰だかよくわからん奴に話をさせて情報が漏れたらどうするきだ。」
先ほど説明されていた一歩輝が注意する。
「そのことは大丈夫だ。」
皆が「なぜ?」という顔をする。能力についての話は企業秘密のようなものなのだろうか。
「それは後で、それで?お前からはなんか質問とかないのかよ。」
質問を唐突に振られ、はっと我に返る。
「あ、そうだよ。さっきの魔法なに!?
それにいきなり連れてこられてここが何をするとこなのかも聞かされてないんだけど」
僕がそう言うと香織さんが
「鋼、あんた何も言わずにつれてきたの!?
この前だってその適当さでやめていった子いたでしょ?」
「うるせえな、今回は特別なんだよ」
特別?特別とはいったい何のことだろう。僕は特別な力なんて持っていない。たとえ持っていたとしても僕が知らないことをなんでこの子はわかるのか。僕は気になって
「特別って何のこと?」
別に自分のことだ。聞いたところでまずいことは何もないはず。
「え、あぁ…まあうん」
何その曖昧な返事!? まあ、曖昧なら深くは聞かないでおこう…
「とりあえず、俺の能力から教えてやるか。最近できるようになったこともあるから全員聞けよ~」
剛君が、無理やり話題を変えた。もう何を信じたらいいんだか…
「俺の能力は、『完全複製』五感で感じ取ったものなら何でも作ることができる」
「ちなみに、俺が作る物の精度は使う五感によって違う。一番精度の高いものは触覚、次に視覚、聴覚、味覚、嗅覚の順番だ。」
「それって物凄いことだよね!?だって大昔に作られた物だって、新品同様に作り替える事ができるってことでしょ?」
「簡単に言えばそういうことになる。俺自体この能力は実際に見たほうが早いしな。」
ちょうど机の上にあった消しゴムを、剛君は拾い上げ、自分の手のひらの上に置いた。
「いいか?例えばこの消しゴムに体から魔力を通す。そうすると消しゴムの構造が情報として俺の記憶の引き出しの中に複製される。」
そう言うと剛は、逆の手、正確には左手を広げて見せた。
「そして、記憶されたものは引き出しから取り出すように作ることができる。」
きれいな青い炎のようなものが、先ほど拾い上げた消しゴムの形と同じ形になっていき、最後には全く同じ消しゴムが完成した。
「まあ、こんなもんだ。中には作りたくても作れないものもあるがな」
どうして魔法使いとはこんなにも魅力的なものなのだろうか。
「僕にはまねできないや。そんなすごい魔法」
「いや、俺は人のものを勝手に複製する偽者だから、すごくなんかないさ」
「二人で話しているとこ、悪いんのだけど将人君の能力って何なの?」
「ちょうど話そうと思っていたとこだ。ほら、先生も来たぞ。」
大きな音をたてて、扉を開けて入ってきた先生らしき人が室内に入ってきた。その人は先ほど自分がいた教室の担任だった。
「おい、お前らなんでこっち見てんの?いつも通りに入ってきただけだよ?」
「おせーよ。なああんた、英語の単語帳持ってたよな?」
「は?まあ、あるけど」
そういうと教師は単語帳を見せた。
「貸せ」
と剛君が教師から単語帳を奪う。
「はいこれ。一通り見てから黒板に見ないで書いてみて」
「はい?なんと申したのでしょうか?」
「だから、一回で暗記しろっていってんの」
「無理無理!絶対無理!解けるわけないじゃん!」
「いいから早く」
と剛君は僕を、黒板の前まで連れていく。
僕は単語帳を一通り見る。ざっと見たが、覚えられるはずがないと、ここであることが起きた。覚えているのだ。全部。一回しか見ていない中にはまだ習ったことのない英単語まであるのにすべて意味まで覚えていて、黒板に書けるのだ。
「これって…?」
剛君のいる方向を向くと、無言で彼が首を小さく縦に振る。僕自身、この現象は今までに一度も体験したことがないのだ。だが、この時僕が思っていたこと、それは、
『ここで、この力で、救えなかったものに対しての罪滅ぼしができるのではないか』
これがのちに大波乱を巻き起こすことはここにいる誰もが思いもよらなかった。
「…書けたよ」
小さな声で、そっと呟く。
そこにはしっかり単語帳に乗っている単語すべてが書いてあった。
剛君がゆっくり、はっきり話す
「その力は今の俺たちに必要な力なんだ。
将人、これからよろしくな」
振り返ると、そこには新たな仲間達がいた。
本当は漫画で描きたかったのに画力がないせいでこうなりました。残念です。初めての小説投稿ですが、生温かい目で見守ってください...(笑)
それでは。