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The Grand   作者: パスカル
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第一話 転校生上

 転校生 上

△ 少年は、教室の窓から外を視ていた。いや正確には、「外のほうに目が向いていただけ」が正しいだろう。それはまだ少年が、世界の仕組みすら分からなかったとき。少年の父親は、漫画のヒーローのような存在、ではなくどこにでもいるような、普通の親。そんな父親が少年は「父親」というより、「尊敬する人」だった。「どんなことが起きても父なら何とかしてくれる」そんなことも思うほどに。少年は彼の言葉を思い出しながら握り拳をつくる。「『力』は相手に勝ち誇るためにあるのではない。守りたいもの、守ってやらなくてはならないもののためにある。そこを間違えるなよ、コウ」_____________________

 「______コウ!高橋剛!」

怒号のような声で我に返る。黒板の前に仁王立ちでこちらのほうを睨んでくる教師がいた。

「私の授業を練るとはいい度胸だな、ちょうどいい私特製の課題がある。お前なら解けるだろう?」

恐る恐る黒板の前に立つ。自分は勉強があまり得意ではない。なのにこの女教師(ゴリラ)は不要な難しい問題を解かせようとしてくるのだ。おかげさまで普段の授業内容が身に入らない(普段から寝ているから一緒だが)

黒板の前で青ざめながらいると一人の少年が教室に勢いよく入ってくる。ふと目が合った、その少年はかなり焦った表情で弁明を始めた。

「遅れました!」と元気一杯に声を出した。

 圧倒的な場違いな雰囲気にクラス全員が固まった。いや、何も声に出すことができなかった。これはあくまで予想だが、誰もこいつのかおをしらないからだと思う。30秒ほど硬直が続いたが流石にしびれを切らしたのかこの静寂を壊したのはもちろん教師である。

「と、とりあえずあいている席に座ってくれ。空いているのは廊下側の後ろから二番目だな。さあ行ってくれ。」教師も驚いた表情をしている。そりゃそうだ。

時は流れ、チャイムが鳴る。

 「えーさっきは詳しいことを話すことができなかったが、次の時間を使って転校生、藤城将人(ふじしろまさと)君について話そうと思うぞ。」

教師の話を聞き、クラスの皆はいろいろ話している。

「どんな子なんだろう?」や「どっから来たんだろうなー」などという声が教室中に広がっている。そんなことしているうちに次の時間を知らせるチャイムが鳴った。

「え~では転校生の紹介をするぞーじゃ、自己紹介して」担任がそう言うと、その藤城将人という少年は自己紹介を始めようとする。

「えっと、さっきも自己紹介的なことはしたんですけど改めて、藤城将人です!前は大阪に住んでいました。その前には東京に住んでいました、気軽にまさととかで呼んでください。よろしく!」

そのように自己紹介が終わると、「じゃ、新しい仲間も増えたところで席替えを始めたいと思うぞ」

久しぶりの席替えに心躍らせるクラスメイトが多いが、俺は窓の席から離れるのが嫌である。窓からの景色はいい。縁を通すことによって世界が変わって見える。もうあの人がいない世界なんて面白いことなんて存在しないのだろう。

「いいかー所詮くじ引きだから文句は言うなよー」女教師はそのようなこと言葉を児童に投げかける。前から順番に引いていき、俺もなくなく引き、席を移動する。移動した席の隣には、さっき転校してきた将人がいた。

「よろしく!」

「よろしくな」俺はそう言いながら転校生の横に座る。

▽僕は、彼の返事に違和感を感じたが、特に気にせず次の体育の準備を始めた。この小学校では、体育の時間は二つに分かれる。一つ目は、普通の中学校の体育、もう一つは対シャドウ戦闘時における基本的な防衛術についてである。僕はどちらも一度体験するように言われている。今日は普通の体育だ。対し、彼のほうは着替えもせずただ寝ているようだった。気になった僕は、

「ねえ、次体育だよ?準備しなくて大丈夫?」と声をかけた。

「大丈夫、もう少ししてから行く。」すごく眠たそうに返事をしたその時、チャイムが鳴る。

「なら、先行くよ?」そう言い残し、僕は走っていく。

 今僕が向かっているのは、この中学校のグランドである。大きさでいうと下手な体育館が4個入るほどの広さである。流石国立というところだろうか。着いたときにはほかのクラスメイトは全員到着していたようだった。

「これで全員か?んじゃ、授業を始めるぞ」軽く準備運動を一人で終わらせ、集団の中に入る。

異譚防戦・上

▲ 転校生が教室を出て、数分後。俺は自分の準備を始めていた。とはいっても何か道具を準備するわけではなく、準備運動のようなものを軽くするだけである。ある程度体をほぐしたところで、今度は自分の魔力の量を確認する。

 「まあ、このぐらいあれば大丈夫だろう。」と言葉を漏らす。その時だった。校庭の方から爆発音が聞こえてきたのだった。


▽ 授業が始まろうとしていた時、僕はふとグラウンドの端の方へ目をやった。いや、やってしまったといった方がいいだろうか。その先には黒い影が巨人のような形を成していた。あと、数秒すれば形は整うであろう。僕はとっさにフォンセだと声を上げようとしたが、声を出す前に瞬きをしてしまった。瞬きから目を開けるとその巨体はもう教師の後ろに立ち、膨大な魔力で爆発を起こしていた。

爆心地である教師のいたところには大きな穴しかなかった。彼女は転移魔法を使い、生徒とともに近くの体育館下にあるピロティーに避難していたのだ。

「なぜ、ここにフォンセが!?結界外だぞ!」

 僕には担任の顔に焦りが見えた。普通の転移魔法は、半径30メートル以内でなければ移動ができない。しかも、ここにいる生徒も含めて力を行使したため、相当な魔力量でなければせいぜいあと一回使えるか使えないかである。どうするのか様子をうかがっていると土で防壁を作りそこに避難をさせ始めた。

先生、助けてと嘆く声が防壁の中でこだまする。ここで籠城を決めるのだろうか。そう思考を巡らせていると、手を地面につけ聞いたことのない言葉をつぶやき始めた。その行動に気付いたのか巨人はこちらの方へ大きな足音を立てながら近づいてくる。そして、黒い巨人は腕とみられる物を大剣のようなものに変化させ、防壁に渾身と思われる一撃を振りかざした。

先ほどの爆発の3から4倍の攻撃だと思われたが、その攻撃で爆発が起こることはなかった。正確には、衝撃が当たる寸前のところで見覚えのある少年が大剣を片手で止めていたからである。教師は安堵した声で

「やっときたか、あまり私の寿命を縮まらせるな」

「まあ、何とか間に合いました。」剛は、一言そういうと大剣をはじき、巨人の腹に拳を叩き込んだ。その反動で巨人は入ってきた入口から校庭の方へと吹き飛んだ。

 彼は、二撃目の攻撃へと移っていた。その速さはまさに一瞬という言葉が似合うであろう。そして、二撃目の攻撃を受けるであろう巨人は、まだ先ほどの攻撃でひるんでいるようだった。二撃目、それは巨人を貫いた。その光景はまるで芸術作品を見ているかのようであった。その光景を見て安心したのか生徒達が次々と腰が抜けたかのように地面に座り込む。だが、彼女は違った。

「まだ終わっていないぞ。できるだけ離れろ。」

その言葉を聞いた僕たち生徒は我が先と駆け足で校舎のほうへと走っていく。最中、一人のクラスメイトが転んでしまった。足をひねってしまったみたいだ。

『また見捨ててしまうのか』と。僕は走った。莫迦みたいに走った。自分が決して巨人と戦う力など持たないのに、自分の在り方に答える『あの時とは違う』と。僕は、倒れているクラスメイトに声をかけ、肩を貸す、その時後ろから巨人が走ってきた。そう、あの巨人は一体だけではなかったのだ。もう自分が犠牲になるしかないと思った僕は、巨人に向かって走る。巨人が二体、三体とこちらに向かってくるのが見える。大剣を振りかざしてくる巨人の姿が目の先に見える。恥じることは一つもない。目をつむって運命に立ち向かう。目をつむる刹那、あの子が見えた。最後にあの子が見えたのは何か意味があるのかな?

「お前、おもしろいな。」

声に気付き、ゆっくり目を開けるとあの少年がいた。

「もしかして助けてくれたの?」

「手が空いたから。それだけさ」

「それでもいいや。助けてくれてありがとう」

「いや、まだ終わってない」

 少年の両手には魔力が漂い形を成していく。その形は完成へと近づいていくと思われていくほどに巨人の持っていた大剣に酷似していく。そして形が整ったのか、その大剣を振り巨人を倒していく。

繊細な攻撃なはずなのに、それらすべてが巨人の攻撃より重く感じられた。全部倒したのかこっちに向かってくる。

「終わったぜ。そこの奴もつれて戻ろうぜ」

「う、うん」

立とうとしたが腰が抜けて立つことができなかった。が、

「ほらよ」

彼は僕に手を差し伸べる。

「これからよろしくね。僕は藤原将人。君は____」僕は言葉を発しながら差しのべられた手を握る。彼はあっけにとられた顔をしてこちらを見ていた。

「どうしたの?」

「いや何でもない。名前は鋼、高橋鋼だ。よろしくな」

そう名乗った彼は少し苦い表情をしていた。 

 了

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