セクハラされた気分デス
二人とも椅子に腰掛けたけど、お互いにどう話始めようかと逡巡する。
キュッと唇を噛んで、クリスティーナが先に話し始めた。
「キャシー…少しお伺いしたい事があるの。
プライベートに踏み込んでしまう事ですから、言いたくなければ言わなくてもいいわ」
ん?聞きたい事?聞いて欲しい事じゃなくて?
「………どう言えばいいのかしら……、キャシーは成人後にある儀式の事をご存知ですか?」
………………えええええーーーー?
クリスティーナの実家の話じゃ無いの?
なんでいきなり儀式の話になるの?
思いがけない話を振られ、キョトンとしてしまった俺の反応を、クリスティーナは儀式を知らないから、不思議な顔をしているのだと思ったようだ。
「一般の方々と違って私達貴族は、家の為の結婚をすることがありますよね。
その際に何も知らないままですと、知らない方も、知っている方もお互い不都合が生じて、不幸を招く事があります。
ですから、成人した貴族の義務として、経験のある方に教えをこう、それを【儀式】と呼んでいますのよ」
まるで幼い子に言い聞かせるように、言葉を選んで言ってくれてるけれど、何でこんな話になっているのかわからない俺の混乱は治らない。
その間もクリスティーナが、儀式の重要性を説いている。
実家で聞いた話以外も、実際過去に起こった話も聞かされた。
「クラスの方々も、この休みの間に済ませているようですけれど、……キャシーはお家の方に何か言われませんでしたの?」
いや、ガッチリ聞いたし、キッチリ済ませてますが?
思わず微妙な表情になった俺を、どうとったのか、
「もしかして、何かお考えがあって伝えていないのかもしれませんけれど、キャシーもそろそろ17歳になられますよね?
それまでに済ませていないと、不名誉な噂を流されることがありますの。
ですから差し出がましいですけれど、お伝えさせていただきました。
キャシー、教えを乞う方はいらっしゃいまして?」
俺が色々悪口を言われないように、揚げ足をとられないようにと気を使ってくれているんだろうな。
仲良くなったきっかけも、囲まれて因縁つけられてるところを助けてくれたんだし、最近も王子関係で絡まれてたし。
でもさ、でもさぁ…、中身のおっさんと……いやお兄さんとしては、若い女の子とシモな話したくなかった感が…………。
「あの…クリス、私この休み中に……その………ねぇ……」
「え⁉︎済まされているの?」
「え⁈」
「え⁈………………全然かわ………」
全然変わってないって言った?
変ってないの?
もしかしてクラスでもまだだって思われてるとか?
えーーー、何とかかんとか精神的ダメージを乗り越えたのに、見えないって?
ショックなんだけど……。
俺がショックを受けている目の前で、クリスティーナも混乱中だ。
「……相手によっては殆ど変化はないのかしら……。
押し付けの相手ならショックが滲み出るでしょうし、好ましい相手なら幸せオーラが出ますし…。
ただの義務としてこなしたのなら、見た目の変化はないのかしら……」
…………きっと心配してくれてるんだろうけど、考えてること全部声に出てるよ……。
でもさ、クリスティーナもあんまり変ってないように見えるんだけど?
「ねぇ、キャシー……、貴女のお相手ってリズヴァーン様なのでしょう?」
「ブッッ!」
いきなりの確信に吹き出しちゃったよ!
「な……なにょ……何を言っ……」
「だって、貴女、あの方のことお好きでしょう?」
「違いますわ!」
「隠さなくても知っていますよ」
ニッコリ微笑まれるけど、確かにキャスティーヌはあいつの事憧れてたけど、でも俺は違う!
って、俺がキャスティーヌか。
「いえ、違うと言いますか、憧れているのであって……
と言いますか、なぜリズヴァーン様が相手だと思われたのですか?」
「ご家族ごとお付き合いがある相手がいらっしゃったら、その方に頼まれるのが一般的でしょう?
キャシーのお兄様のご学友でもありますし、好ましく想っていらっしゃる方ですから、他の方は思いつきませんわ」
頭の回転の良い人って怖い。
隠し事とかできないんじゃないの?
話変えたいし、受けたダメージの少しでも反撃して良いよね?
「クリスのお相手はどなたなのですか?
モースディブス様と交流をされているようですし、あの方のなのですか?」
どうだ、自分のことなら恥ずかしいだろ、俺の衝撃がわかったか。
内心勝ったと思っていたのに、めちゃスルッと返された。
「なぜあの方なのですか?
私はハズール先生に頼みましたわ」
ええ?まさかの教師?
「教師が教え子に手を出しても良いのですか⁉︎」
思わず大声が出ちゃったよ、淫行教師はダメだろう。
「何を驚いているのです?
教えを乞うのですから、身近に相手がいない私には、教師が一番適任だと思いますけど?」
えええーー、エッチが授業の一環みたいに考えてるの?
そんなんじゃないと思うんだけど…。
割り切りすぎな気がするんだけど、えええええ〜〜〜………。
ショックが過ぎて、その後何を話したか記憶にないし、何よりクリスティーナの家の話を聞くってのはどこに行った?
そんな感じの後期の新学期初日でした。




