冬の領地
毎年のことだが、リズヴァーン一家は十日ほど滞在する。
お互いの領地の問題点や改善点を話し合ったり、剣の鍛錬をしたり、のんびりしたり、のんびりしたり。
国境を護る辺境伯がそんなに領地を開けてもいいのかと言うと、他はどうか知らないが、この一家の場合は問題ない。
東の地には私兵を全員残してきている。
更に万が一に備えて傭兵も雇い、家の者も全て置いてきている。
つまり、リズヴァーンと両親の3人だけで、馬で来ているのだ。
トーマソンとリズヴァーンだけではなく、元メイドのマルグリットも体を鍛えている。
母のお付きの頃から魔法は得意だったけど、トーマソンに嫁ぐにあたって、体を鍛え始めて、どんどん落ちていく脂肪にかわり、体に纏われる筋肉にハマってしまったようだ。
元々背の高い某アニメのオリー◯の様な見た目だったそうだが、今では……うん、凄いっすわ。
鍛え上げられた筋肉と、元々の魔法の才能が合わさり、めちゃくちゃ強い。
魔力を乗せた攻撃だからね。
持久戦に持ち込まれると、魔力切れをおこしたりするけど、短期戦なら最強だ。
それに土地を護った男と、その間の一人息子なんだから、下手な護衛は帰って足手まといなんですと。
この3人ならたとえ領地で問題が起きても、馬車で半日程度の距離なら、本気を出せば一時間半もかからず戻れる。
なので、うちの家族が揃う時は、一家の休養日として3人揃い、サリフォル家に来るのだ。
アスデモス家の護る土地と隣国との間には森があり、魔獣が出る。
森の獣も魔獣も、種類によっては美味しく食べられるので、農業一辺倒のうちと違い、狩りに重点を置いている。
アスデモスの土地から肉を回してもらい、あちらに足りない農作物を渡している。
そんな土地柄からか、アスデモス家の領地の住人は、男女とも立派な体格をしている。
移住した人達は、生活の中で筋肉を育み、その土地で生まれた子供は、小さな頃からの英才教育なのか、子供なのにゴツい。
だからなのか、元々の気質なのか、トーマソンとマルグリットはキャスティーヌを猫っ可愛がりする。
両親も祖父母も構い倒す。
………つまり、周囲皆の愛が重いのである…………。
去年までなら、100%キャスティーヌだから平気だったんだろうけど、今の中身は自由気ままな一人暮らしの独身貴族だった俺だ。
学園と言う息抜きの場もないのは、正直辛い。
屋敷の中どこにいても、あっという間にバレて誰かしらに捕まる。
撒いても撒いても捕まるのは、メイド達に見張らせてるのか?
特に兄な。
下校の時も思ったけど、マジにGPSでも仕込んでないか?
こっそり屋敷を出て厩へ行き、馬を一頭借りる。
口止めはしたけど、きっとすぐにバレるだろうな。
それでも一人の時間が欲しいから、馬を走らせ……られないので、歩かせる。
雪は積もっているけど、屋敷から町までは、荷馬車の通れるくらいは軽く雪かきをされている。
サリフォル家から町へ、町から領主の屋敷へ、そこから村々へ、主だった道は最低でも馬が通れるくらいは雪かきしている。
雪かきは農業のできない冬の間、住民の稼ぎの一つだ。
サリフォル家の治める土地は広いので、領主を置いている。
親戚なのだが、わかりやすく言うと、分家筋かな。
元々広大な領地だったのに、近隣の小さな村が、庇護下に入りさらに広がったと。
勿論王家の許可のもとだよ、勝手に広げてないよ。
それぞれの町外れに温室が建てられていて、中では蚕のように糸を作れる魔虫が飼われている。
魔虫の世話は子供や年配者の仕事だ。
女性は機織りや、蔦細工などをし、雪が溶けたらまとめて王都へ卸す。
男性は雪かきの他に、この地の土を使った陶器の壺を作る。
この土地の土と水で造られた壺は、何やらパワーが有るらしく、中に入れたものが変質しにくくなるらしい。
勿論ただこねて焼くだけでは、パワーの有る物は作れない。
詳しい製法は工房主にだけ伝えられるそうだ。
かなり高額で取引されるのだけど、この土地の住民は皆農民なのだ。
物づくりはあくまで、農業の閑散期の副収入と言う考えなので、毎年決まった数しか作らない。
住民はこの土地で農作物を作ることに誇りを持っているのだ。
冬の間の収入源を提示したのは、うちの御先祖達だ。
昔は冬の間の収入が無く、色々問題があったらしい。
………色々とね。
まぁ、そう言った事も領地経営の一端だよね。
一族の治める土地はモデル都市と言ってもいいほど、うまく運営されてると思う。
うん、この家の子で良かった良かった。
そんな事を考えながら、雪に埋もれた領地を見渡す。
広大な大地に所々針葉樹が植えられている。
農作業中、その下で休憩したり、雪に埋もれた土地の目印になっているのだ。
日差しの強い時期に、木陰で休めるのは良い考えだと思う。
冬の間の収入もだけど、住民の事を考えいる事が伝わってきて、誇らしい気持ちになる。
家を継ぐ兄も、先達に負けないように、頑張って欲しいものだな。
色々な事を考えながら、ゆっくり馬を歩かせていると、少し先の木下に馬が繋がれているのが見えた。
馬車を引く馬では無く、乗馬用の馬だ。
…もしかして……と、遠くから目を凝らすと、木の下に二つの影。
………うん、俺は何も見なかった、うん。
よし、気分転換もできたし、屋敷へ戻ろう。
今ならとりあえず兄はいないみたいだからね。
★★お知らせ★★
次回30話から、40話までの10話、連続投稿します。
前回5話分で、今回は倍、次回はさらに……なんて事は無いと思うけど、とりあえず、今月は10話連続、よろしくです。




