周囲の人々
ここでちょっと俺の周りの人達の話をしよう。
まずはある意味キューピットなモースディブス。
彼は卒業後親の店で働いていたそうなのだが、別れた女性が乗り込んで来て、店で騒動を起こし、勘当…まではいかなかったけど、国から出され、出身地である南の国で店を出している親戚の叔父の家に預けられたとか。
上手くやってると本人は思っていたんだろうけど、三叉四叉当たり前、彼氏持ちにも手を出すなんて、刺されてもおかしくないよね。
次に王子。
彼は相変わらず真面目にやっているそうだ。
スカーレットとの関係も良好だし、卒業後に彼女と結婚した後は、外交官補佐として他国との調整を行うようになる為、他の国の事を学び直したり、近い年齢の他国の王族と繋ぎをとったりしているとか。
そして、課外授業で同じ班になったオクトバルが、側近候補として教育を受けているとか。
それまで目立たないようにしていた彼が本気を出したらしく、座学でも実技でも、王子とワンツートップなんだって。
その王子に嫁ぐスカーレットは、王子に付いて各国を訪れる事となるので、他国の王侯貴族のパワーバランスや、馬鹿にできない女性の噂話の収集、それの裏付けやらなんやらで、忙しくしているとの事。
なーんと、そんな彼女の補佐をしてるのが、女生徒ABCだと聞いた時には自分の耳を疑ったよ。
男ができて大人しくなった…大人になった?彼女らは、情報収集のエキスパートだとか。
うん、俺に絡んでこなければなんでもいいや。
ヤスハルは、クリスティーナの店で大和の国の菓子を扱っている事が知れ渡ることで、クラスでも友達ができて、今では学園生活を楽しんでいるそうだ。
もうぼっちランチは卒業できたみたいで良かった良かった。
コウエンジはそんなヤスハルに安心し、クリスティーナの店がオープンして暫くしたら、次の留学先へ向かって行った。
次は西の大国へ行くらしい。
行動力のある女性だよね。
クリスティーナの店の職人達は、店の近くに建てた寮へ移り住み、今では家に居ない。
大和の国から本格移動して来た生菓子職人や、弟子として王都で雇ったパテシエ達も寮で過ごしているけど、カネダ氏とソーカ氏はちょくちょく手土産を持って遊びに来てくれる。
新商品ができると、一番に持ってくるし。
「オーナーや店長が先なのでは?」
と聞いても、
「大和の国の菓子に関して、この国で一番の理解者兼試食の第一人者は貴女です」
とか言われてしまったよ。
ま、ありがたく頂戴していますが何か?
ベルアルムとは、なんだかんだで付き合いが続いている。
俺の意のままにならないしょぼい能力のことも、ちゃんと黙っててくれてるし、新生児への儀式にも立ち会ったり、子供達にプレゼント持って来たり。
俺に対する興味が薄くなってくれた気がする。
でも知り合い…いや、友達としての距離感で、なんだかんだといい関係になっているのでは?と思う。
俺への興味が子供に移ったって気がしないでもないけど。
いやさ、俺は知らなかったんだけど、この国では双子って珍しいんだって。
しかも男女の双子は、ここ数十年生まれていないとか。
そんな訳で興味津々なのだが、特に娘に非常に興味を引かれている。
なーんとなく嫌な気がしないでもない今日この頃。
両親達とジジババは、見事に孫、ひ孫にハマっている。
うちの両親以外は遠い領地に居るもんで、滅多に会えない…筈だけど、入れ替わり立ち替わり会いに来る。
勿論領地経営に差し障りのない範囲なんだろうけど。
子供達が一歳を迎える年末にアスデモス家の領地へ行くんだけど、そうなるとジジババはしょっちゅう会いに来る気がする。
逆に両親と距離ができるから、今度は父と母が会いに来ることになるんだろうな。
そう告げると、母は暫くはサリフォル領に滞在するそうだ。
父より孫優先で、父一人王都に残ることになるとか。
父は渋っているけど、まさか仕事辞めて領地へ居を移す…なんてことにならないよね?
兄は言わずもがな、叔父バカ炸裂です。
姪だけでなく、甥も区別なく可愛がってくれてますよ。
貢くんになっていますよ。
ジジババ以上に甘々ですよ。
教育に良くないほどめちゃ甘ですよ。
そろそろ軌道修正をかけないとヤバいくらいですよ。
甘やかすだけでは子供はダメになるって、頭の良い兄ならわかっているはずだろうにね。
旦那になるリズヴァーンは…うん、文句のない旦那だと思う。
ずっと俺に興味がなく、婚約してもまだ興味が薄かったのに、妊娠発覚からどんどん変わってきて、今では中身別人?と思うほど子煩悩、ついでに俺にも気配りのできる、いい旦那だ。
以前は兄の影の立ち位置だったけど、今では自信に満ち溢れた…開花したって感じ?
とりあえず一家の大黒柱として頑張ってください。
そんな俺達の子の双子、名前が決まりました。
長男の元気な男の子、よく動くしお乳もたっぷり飲む、とても赤ちゃんらしい赤ちゃん。
リズヴァーン譲りの濃い茶色の髪に、サリフォル家の碧の瞳、赤子ながらしっかりした手足。
いい跡取りになれそうな男の子。
その名は ジルベール・アスデモス。
…………いや、色々言いたいよ、突っ込みたいよ!
でもこの名前サリフォル家で一番の功績を残したご先祖さまの名前だそうで、肖って付けたのだ…義父が!
どんだけサリフォル家を好きなんやねん!
自分の家系じゃないのは、おじさんもおばさんも実家との縁が無かったから、代々家族仲の大変よろしいサリフォル家に肖りたいんだって。
まだ赤ちゃんだからどう育つかわからないけど、俺に似たらジミーだし、リズヴァーンに似たら細マッチョだし、ジルベールって感じじゃないよ。
せめて兄に似てくれれば……。
まあ、そんな俺の内心は、この世界の人には伝わらないけどね。
そして娘。
金に近い茶髪でやはり碧の瞳。
二人とも碧い瞳って、サリフォルの血が強いのか?
ジルベールよりひと回り小さい女の子。
この子のことは今度詳しく話させてもらうとして、名前は プリシラ・アスデモス。
これ、俺が付けたと言うか、生まれたてを見たとき溢れた言葉を付けられました。
いや、生まれたての赤ちゃんって、頭の形が丸くない事があるとか知らなかったんだよ。
でだ、卵形って言うか、とんがり帽子を被ってるような形と言うか、ちょっと長くて、そこにへばり付いて濃ゆく見えた髪の毛の色とかのバランスで、思わず
「プリシラかよ」
って突っ込んでしまったんだな、これが。
それを聞いた医師が、家族に赤ちゃんを見せる時に
「二人目のプリシラ様です」
と、皆に伝えてしまったとか……。
オタク気味な母親と、オタク腐女子な姉貴の英才教育の賜物で、古いアニメや漫画に詳しい俺が悪いのか、とにかく下手な突っ込みは口にするべきではないな。
そして、最後にヒロインの(筈)クリスティーナ。
年末を迎える前に、子爵家が没落した。
彼女の兄が、年末に領地で集めて国へ納める税金を持ち逃げしてしまい、父親は責任を取って投獄でお家取り潰しの爵位返上。
兄には指名手配がかけられたけど、クリスティーナは情状酌量と言うか、何も携わってないし、彼女の評判や王子の援護もあり、罪には問われなかった。
お店の開店の目処も付いてたため、学園は辞めて、春前の開店を目指して忙しくしている。
ここは彼女が世界の中心のゲーム内世界だと思っていたのに、家族と縁をなくし、爵位をなくすなんて、アリなの?
でも、自分の手で新たに未来を切り開いた彼女は素晴らしいと思う。
忙しい合間を縫って、よく会いに来てくれる。
そんなある日、冗談紛れで彼女が言ったのが、
「キャシーがその記憶のように男性なら、私貴女を自分のものにしていたかもね」
……え?隠しキャラってもしかして俺だったの?
まあ、結婚だけが女の幸せじゃないし、彼女が幸せを感じる生活を送ってほしいものである。
そんな俺の周囲でした。




