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第百二十話 少年VS勇者

データが色々消えました( ˙°˙ )

遅れましたが折れませんでした。

このまま二章の完結まで行ってみますよ。

大丈夫ですよ私は、ええ。

ホント……ホントに……。( つω;`


 勇者が最下層までアルデンテと落下していたその時、チート少女かなみは珖代の元まで┠ 瞬間移動 ┨で駆け付けていた。ボロボロの体で必死こいて精鋭アンデッドたちの猛攻を掻い潜っていた珖代は、あと数秒かなみの到着が遅れていたら確実に死んでいたことだろう。

 

 まだ全快した訳でないが、さすがチート少女。彼が一体しか仕留められなかった周辺の精鋭たちをものの二秒で一掃した。風魔法による攻撃なのか早すぎたせいなのか珖代にはそれが全く見えなかった。

 

 男が「助かったよ」とお礼を述べると少女は体格や骨密度が強化されたアンデッドの姿に驚いたようで聞いてきた。

 

 「珖代、このアンデッドなに!」

 「アルデンテの奥の手だ。たぶんこれが最後の抵抗だ……」

 「そっか、もう少しなんだね……!」

 

 嬉しそうに跳ねるかなみは同じ最下層で戦う勇者の姿を見て、行動に出る。額に二本の指を当てるその行為は┠ 瞬間移動 ┨の行動(サイン)──。

 

 「待ってかなみちゃん!」

 

 珖代は腕を掴んでスキルの使用を止めた。

 

 「俺たちユールに住む者じゃアルデンテは倒せない! そういう契約になってるんだけど……とりあえずその、ヤツのことは勇者たちに任せようっ!」

 「え? あ、うん。じゃあ──」

 

 少女はおもむろに腕を前に突き出して、勇者の不意を狙うアンデッドをデコピンで弾くように遠距離から粉々に粉砕した。

 

 「──これは、アリ?」

 「そう、だね……。一匹でも多く倒して、洸たろうの負担を減らそうか!」

 

 既に多くの血を流し、ほぼ気力だけで立っていたハズの男が、再び聖剣を中段に構え直し気合いを入れ直す。足取りが重く、常に肩で息をしている彼がもうまともに戦えない状態にあるのは、かなみにも分かっていた。しかし正念場で倒れたくないという強い意志を汲み取って、背中に寄り添い倒れないようにそっと支えた。そして自分の力の一パーセントでも分けてあげたいという一心で「一緒に頑張ろう!」と声を掛けた。


 ~洸たろうサイド~

 

 「──くっ!」

 

 水戸洸たろうは割り込んで来た精鋭二体の攻撃を二本の剣で受け止め、衝撃を逃がす為に後ろに飛んだ。

 そのまま疑問を口にする。

 

 「どうなってるんだ……その腕は切り落としたはずだろ」

 

 切断した右腕が長い時間をかけて元の切断面と結合した。【不死斬り】で斬ってなお繋がる異常な再生力に洸たろうは少しだけ動揺を隠せない。

 

 「はっ。むしろ、こんなに長いことくっつかなかったことがボクのジンセイにおいて初めての経験だよ」

 

 そう言いながらアルデンテはくっ付いたばかりの右腕を回し、どこまで馴染んだかを確認する。

 

 【不死斬り】は確かに #アンデッド特攻+1300% なるものを有しているが、これは単にアンデッドに対して十三倍の威力を得るだけであって不死属性そのものを完全に無効化するものでは無い。

 

 ユニーク発動中の水戸洸たろうの現在のステータスを数値化するならば──。

 

 

   水戸洸たろう

 攻撃力: 2320→2784

 (アンデッドのみ36192)

 瞬発力: 1830→2196

 持久力: 3000→4200

 集中力: 1090→1526

 物耐久: 2960→2072

 魔耐久: 3050→2135

  魔力: 5660

 (アンデッドのみ73580)


 となる。

 アンデッド特攻、それと

 #精神昇華 (持久集中増加)+40%

 #身体昇華 (攻撃瞬発増加)+20%

 #肢体強度 (物魔耐久減少)-30%


 によりステータスに一時的な変更はあれど、不死無効には至らなかったのだ。

 

 赤と黒に燃える双剣の熱にじりじりと両手を焦がしながら、洸たろうは考える。剣を交えて考える。

 幸いにも、あまり高いと言えなかった集中力が上がっているお陰もあって、屍兵に不意を突かれることはなかった。だが、二刀流になったアルデンテは単純に手数が多くまた、技もあべこべでそこそこの苦戦を強いられる。元々高い持久力(スタミナ)が、集中力より先に切れそうだ。

 

 「どうやら、二刀流の腕はボクのほうが上みたいだネ。おにぃちゃん」

 「ふっ……冗談じゃない。剣は借り物、型は盗み見。オマケに味方の補助付き……。そんな模造品のお前が、どうやったら上だと勘違いするんだ」

 「イイねその感じ。ぶち殺してあげたくなる」

 

 斬り合いと舌戦を続けていたアルデンテが急に距離を取った。とはいえ逃げる訳でもなく、じっと勇者の出方を伺っている。

 

 「鈍いよ、お前」

 

 唐突に放たれた言葉。

 これは、五賜卿アルデンテの剣を受けた水戸洸たろうの総括だった。

 

 「生者と同じ目線に立った瞬間から臆病風吹かせていたんじゃ、俺たち(・・・)には勝てない。絶対に」

 

 俺たちに含まれているのが手元の二剣であることは少年にも伝わる。

 

 「モノに命を宿らせるような発言……。生者らしい憐れで見苦しい発想だネ」

 「お前の無念も、俺が背負うよアルデンテ」

 

 勇者が優しく告げると、アルデンテは真正面から一気に間合いを詰めた。顔は怒り半分。笑顔半分。こういった時のアルデンテはむしろ酷く冷静である。感情に任せて牙を剥くように見せかけて、洸たろうの背後にアンデッドを召喚しトドメを任せた。──しかし、アンデッドは無情にもかなみのデコピンに砕かれた。

 

 呆気に取られるアルデンテ。その刹那に生まれた大きすぎる隙を勇者は見逃さなかった。二本の形見剣がそのカラダにごうを刻み込む。

 

 腹、腰、背中。

 すれ違いざまに六連撃食らったアルデンテは水溜まりの中に片膝をついた。

 

 「がハッ……」

 「お前は下だよアルデンテ。俺よりずっとな」

 

 背後からそんな言葉が聞こえて、怒髪天どはつてんを衝いたアルデンテが振り向きざまに二本の剣を投げ付ける。

 憐れに思われるよりも、数百歳年下の人間に弱いと思われるのが何倍も許せなかった。


 「このおおぉ!!」


 洸たろうが冷静に剣を弾くと、一本が運悪くアルデンテの脳天に突き刺さった。またしても生まれた隙を洸たろうは容赦なく攻め、心臓と肺を貫くように串刺しにした。

 

 「イタイッッ!! いたいイタイイタイぃだい゛いたいイタイ」

 

 アルデンテが熱さと痛みに耐えかねて唾液を撒き散らしながら叫ぶ。しばらくそのままにしていると鬼気迫る表情で腕を掴みに掛かるので、遠心力を利用して剣を抜き、放り投げた。

 

 脳天に剣が刺さったままアルデンテは力なく地面に伸びる。周囲から魔法陣が消えていく──。精鋭のアンデッドたちが主人の一大事に形が保てなくなり全て瓦解した。

 

 トメとピタはリズニアと第二層で合流して共に戦っていたのだが、突然アンデッドが消えたことに拍子抜けして辺りを見渡す。リズニアは説明を後回しにして、二人を連れて最下層に向かうことを決めた。

 

 珖代は自分の役目が終わったのだと知りかなみにもたれるも、水没しない高さに造られた民家の段差まで運ばれ、そのあとかなみの膝の上で横になった。

 

 「こうだい!」

 「「コータロー!」」

 

 最下層に着いたリズニアは一目散に珖代の元へ向かい、安否を確認するようにかなみの傍に張り付いて座った。

 トメとピタも同じように洸たろうの元へ向かおうとするが、洸たろうは二人に手のひらを向けて待ったをかけた。どうしたの? と言いたげなふたりの目線に対して勇者はこう言った。

 

 「下がって。まだ終わりじゃない」

 

 その言葉通りにアルデンテがゆっくりと起き上がり頭の剣を抜いて立ち上がった。

 

 「……誰が負けるのかな? ボクかな? キミたちかな? ボクはずぅぅっと笑っていたいなぁ! あはは、あはははははは、あハハハハハハハハハハハハハハハは!!!」

 

 瞳孔を開き笑うアルデンテの大きな声が、カラになった空間に響き渡る。足元にはアンデッドを召喚した時と同じ魔法陣が再び映し出しされている。洞窟内に広がったどの魔法陣より大きく深く伸びて、膝下まで溜まった濁る水面を赤く光らせる。

 

 魔法陣から伸びる黒い線が突如、アルデンテの背後から突き刺さり胸の中央を貫いた。

 

 自害ではない──。

 黒い線から白い流動体物質が全身に染み出して白に包まれていくと、外骨格が形成され、肋骨のような湾曲する骨が全身を覆った。背中には骨で出来たような長弓を背負っている。

 

 万策尽きたように思われたアルデンテの、本当の秘策が遂に姿を現した。

 

 


水戸洸たろうの

攻撃力36192は世界トップ3位。

魔力73580は世界トップ41位。

アンデッドのみだとしても、彼は一時的に世界トップクラスの実力者だった訳です。


ちなみに【不死斬り】は物魔両方を兼ね備えているので2つの値を足した威力になります。

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