45 もうですか!?
ロマに連絡をして女子会を開いたミアーナだったが、その時に、コレンが乱入してきてロマを怒らせた。
自分勝手なことばかり言うコレンに心底呆れたロマは、ミアーナに婚約を解消することを告げた。そして、その後はミアーナの相談に乗ってくれたのだった。
女子会の次の日、ミアーナの表情はいつもよりも明るかった。コレンの件に時間はとられたものの、ミアーナ自身の悩み事もロマに話すことができ、自分の気持ちを整理することができたのだ。
ロマは婚約を解消しようとしているのに、自分の幸せな悩みを相談するようで気が引けていた。しかし、ロマのほうから聞いてくれたおかげで話すことができた。そして、ミアーナの恋の自覚をロマは自分のことのように喜んだのだ。
(友人って本当に大事ね)
昨日は話が長引いてしまい、帰りが遅くなった。しかし、元々王都への遠出だとわかっていたため、二連休をもらっていた。いつもよりも少し遅い時間に起き、身支度を整え、朝食をとろうと部屋を出た。
廊下の窓から見える外の景色は雲が少ないのか、太陽の光でいつもよりもキラキラ輝いて見える。おろしたばかりの青のワンピースドレスを着ていることもミアーナのテンションを上げていた。
上機嫌でダイニングルームに入ると先客がいた。
「おはようミアーナ」
白シャツに黒のスラックス姿のマーベリックが、笑顔でミアーナに挨拶をした。
「おはようございます」
胸はドキドキしているが、そんなことが気取られることのないような自然な笑みを浮かべてミアーナは挨拶を返す。
マーベリックは部屋の奥の椅子に座って食事をしていた。普段、ダイニングルームで食事ができるのはラゲクとマーベリック、そしてミアーナだけだ。
「ご一緒してもよろしいですか?」
「もちろんだ」
マーベリックの承諾を得たので、ミアーナは彼の隣に座った。
「今日は仕事が休みなので、いつもよりもゆっくり寝かせていただきました。マーベリック様はこれからお仕事ですか?」
「その予定だったんだが、急きょ休みにされた」
「どうしてでしょうか」
「手が足りているというのが一番の理由だが、父上から王城の様子を見てこいと言われた」
「王城の様子、ですか」
ミアーナとマーベリックが話をしている間に、メイドが素早くミアーナの分の食事を運んでくると、呼び鈴を置いて部屋から出ていった。
(気を遣って二人にしてくれたみたいね)
話の内容もそうだが、気を遣う理由は他にもあった。使用人たちはマーベリックとミアーナがうまくいくことを願っており、チャンスがあれば二人きりにしようとしていた。
「話の続きだが、食事をしながら聞いてくれ」
「ありがとうございます」
食事前に祈りを捧げ、湯気が立ち上るコーンスープにスプーンを入れた時、マーベリックが言った。
「早朝、ロマ嬢の遣いがやってきて、コレン殿下との婚約の解消を知らせてきた」
「もうですか⁉」
口に運ぼうとしていたスプーンを空に戻して聞き返す。そんな彼女を見てマーベリックは苦笑した。
「やっぱり知っていたか」
「はい。先日お会いした時に決めたとおっしゃっていたんです」
「昨日はロマ嬢とミアーナだけの茶会ではなかったのか?」
不思議そうな顔のマーベリックに、スープを一口飲んでから答える。
「実は、コレン殿下が花束を持って乱入してこられたのです」
「女性だけの集まりに許可なく混じろうとするなんて、自分から嫌われにいっているようなものだな」
「私もそう思いました」
呆れた顔をしたマーベリックの発言に、ミアーナも同意した。
「……彼のことだ。ミアーナに逆恨みをするかもしれない。そうなる前にコレン殿下に話をしにいったほうが良さそうだな」
「何を話すおつもりなのです?」
「あなたが恨むべき相手は俺だと言うんだ」
「どうしてマーベリック様になるのです? 今回の件に関わっていないではないですか」
「関わっているだろう」
マーベリックが何のことを言っているのかわからず、首を傾げる。
「本当にわからないのか?」
「はい。ロマ様が婚約を解消しようと思った決め手は私ですし……」
先程までの明るい気持ちが消え去り、ミアーナが眉尻を下げた時、マーベリックは言った。
「ロマ嬢を巻き込んだのは俺だぞ」
「……はい?」
「もう忘れたのか? 君に彼女を紹介したのは俺だ。だから、誰が巻き込んだのかと問われたら俺になる」
「で、ですが」
「君らしくないな」
マーベリックは、優しい眼差しをミアーナに向けて言った。




