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【書籍発売中】結婚初日、夫から「義理の姉を愛している」と打ち明けられました  作者: 風見ゆうみ


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43 よろしくお願いいたします

 次の日、ミアーナはフラティナとイガム子爵たちを連れて、スココ男爵邸を訪れた。バンハは二人が自分を許してくれたのだと思い喜んだが、それもつかの間のものだった。

 フラティナが握っているシルバートレイを見たバンハが「大事にしているんですか?」と尋ねると、彼女は冷たく答えた。


「大事にしています。ですから、あなたのコレクションにはさせません」

「……え?」

「あなたが私の物を盗んだり、捨てたものを拾ったことは知っています。気持ちが悪いのですべて回収し、処分させていただきます!」


 フラティナが宣言すると、子爵が「屋敷内をくまなく調べろ」と連れてきていた使用人たちに指示した。


「ちょっ、ちょっと待ってください! 誤解、誤解です! やめてくれっ!」


 泣き叫んで止めようとしたバンハだったが、イガム子爵に床に押さえつけられて身動きが取れなくなった。そして数分後、隠し部屋が見つかり、バンハのコレクションはすべて没収された。


「そんな……、どうして……、好きでいるくらいいいじゃないか」


 床に頬をつけて嘆くバンハに、ミアーナは優しく話しかける。


「好きなだけなら良いのです。でも、あなたは窃盗をしていますよね。それは好きなだけとは言いません。罪を犯していることも印象としてはマイナスですが、自分が好意を持っている相手でも、そんなことをされたら気持ちが悪いと思います」

「き……、気持ちが悪い?」


 バンハは声を震わせ、信じられないといった表情でフラティナを見つめた。彼女は冷たい眼差しをバンハに向ける。


「ええ。言葉が悪くて大変申し訳ないですが、気持ちが悪いですし、もうあなたの顔を見たくありません」

「バンハ、もうお前と私は兄弟ではない。二度と私たちの前に現れるな」

「そ……そんなっ」


 バンハは子爵に通報され、捜査権を持つ騎士団に逮捕された。男爵の爵位は剥奪され、平民として生きていくことを余儀なくされたのだった。


******


 バンハの件から十日後、マーベリックの暗殺を考えていたヨーカも、自分が雇った暗殺者の裏切りによって逮捕された。暗殺者側が次期公爵を殺して、ヨーカからお金をもらうよりも、次期公爵と話をしたほうが金になると判断したからだ。話を持ちかけたのはマーベリックで、万が一、暗殺者が自分を殺そうとしないように拘束しての話し合いだった。

 ヨーカは容疑を否認していたが、ロコッドもいなくなり、生きていく気力を失いかけていた彼女は、捕まって二日後には自白した。

 現在は女性刑務所に収容されており、今までの暮らしとはまったく違う環境に耐えられず、毎日「馬鹿なことを考えなければ良かった」と泣いていた。

 ロコッドは先輩たちから厳しい指導を受けながらも、灯台守の仕事を続けていた。というよりも、続けざるを得なかった。泣き言を言うばかりの毎日を送っており、ヨーカと同じく、ミアーナたちを裏切ったことを後悔していた。

 だが、ルイティーへの思いもなくなったわけではなかった。ルイティーが嫁入りのために出港した時には、複雑な思いになりながらも、その船が見えなくなるまで見送った。

 そして問題が片付いたミアーナは、今日もミュークド公爵邸で元気に働いていた。

 夕方になったので仕事を終えようとしていると、ラゲクとマーベリックが彼女に近寄った。


「ミアーナに話がある」

「……なんでしょうか」


 ラゲクに話しかけられたミアーナは、背筋をピンと伸ばして、彼を見つめた。


「そろそろ、お前も婚約者がほしいとは思わないか?」

「……いつかはとは思いますが、また、義理の姉を愛していると言われたくないのです」


 苦笑して答えると、マーベリックが手を挙げる。


「俺には兄はいない。だから、どうだろうか」

「……どうだろうか、とは?」


 急にドキドキし始めたが、動揺を悟られないようにミアーナは尋ねた。


「俺の婚約者になってくれないだろうか」

「……マーベリック様が、私の?」

「ああ。君といると居心地がいいんだ。婚約者として仲良くなって、君が結婚しても良いと思ってくれたら、俺と結婚してほしい」

「えっ⁉」


 今すぐに倒れてしまうのではないかと思うくらいに、心臓が早鐘を打つ。マーベリックに惹かれていたことは確かだし、そうなったらいいなと思ったことはもちろんある。しかし、それは想像だけで、まさかこんな展開が現実に起こるなんて思ってもいなかった。


(ど、どうしたらいいの⁉)


 嬉しい気持ちが強いが、自分なんかでいいのだろうかという気持ちもある。パニックになっているミアーナに、マーベリックは眉尻を下げて言った。


「迷惑なら迷惑だと言ってくれたらいい」

「ち、違います! 迷惑なんかではありません! あ、あの……、私でよければ、よろしくお願いいたします」


 なんとか言葉を吐き出して頭を下げると、マーベリックは安堵の表情を浮かべる。


「こちらこそよろしく頼む」


 頭を上げたミアーナはマーベリックの笑顔を見て思う。


(何かの間違いで、マーベリック様に兄ができたとしても、義理の姉を愛しているなんて言われないように努力しないといけないわ)


「こちらこそ、よろしくお願いいたします!」


 ミアーナはもう一度頭を下げたあと、婚約についての条件をラゲクも含めて話をすることにした。


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